研究課題
心不全の発症と進展において、不良なタンパク質の蓄積・凝集が関与している。オートファジーは不良タンパク質を分解・除去する分子機構である。近年、オートファジーによる選択的小胞体分解(ERファジー) の存在が明らかになったが、心臓における役割については検討されておらず、本研究ではそれを明らかにする。マウスの心臓に大動脈縮窄を作成して、圧負荷心不全モデルを作成した。大動脈縮窄後4週の不全心では、ユビキチン陽性蛋白質やP62陽性タンパク質が蓄積していることが確認され、不良タンパク質の蓄積を示唆していた。小胞体膜蛋白であるCCPG1は、特徴的なLIRモチーフにより、小胞体内の不良タンパク質分解に関与することが報告された。我々の検討では、CCPG1 mRNAレベルは大動脈縮窄後の不全心で有意に低下しており、ERファジーの低下から心不全の進展に関与することが示唆された。続いて、H9c2心筋細胞を用いて、SiRNAによりCCPG1のノックダウンを行った。CCPG1特異的SiRNAトランスフェクションして検討したが、CCPG1のタンパク質レベルの低下が認められなかった。そのため、CCPG1のERファジーに関する機能解析までには至っていない。並行して、非ミリストイル化不良タンパク質蓄積に関与すると考えられるNMT1およびNMT2をノックダウンしたところ、ウエスタンブロッティングでLC3B-IIの増加を認め、オートファジーの促進が示唆された。Bafilomycin A1投与によるオートファジーフラックスでの検討でも、LC3B-IIの増加を認めており、非ミリストイル化不良タンパク質の蓄積により、オートファジー活性化が確認された。また、p62基質蛋白質の低下を認めた。一方でユビキチンタンパク質蓄積が認められた。引き続き不良タンパク質蓄積に伴うERファジーの意義に着目して解析を行う予定である。
3: やや遅れている
in vitroにおけるCCPG1のERファジーの意義に関する検討では、CCPG1ノックダウンの系が確立出来ず、心筋細胞における内因性のレベルでのCCPG1発現量が多くない可能性があり、CCPG1心筋細胞特異的ノックアウトマウス作成には至っていない。一方、不良タンパク質として、非ミリストイル化タンパク質がオートファジーを誘導することが示唆され、ERファジーとの関連性について並行して解析を進めている。
in vitroでは、内因性レベルでのCCPG1発現が多くないと考えられるため、小胞体ストレス刺激などによりCCPG1発現の変化を確認する必要がある。この結果を得て、CCPG1 Floxマウスを作成して、αMHCプロモーター下にCreリコンビナーゼが発現するαMHC-Creトランスジェニックマウス(αMHC-Cre+)と掛け合わせ、心筋細胞特異的CCPG1ノックアウトマウス(Ccpg1flox/flox;αMHC-Cre+, Ccpg1-/-)を作成する。一方、不良タンパク質として、非ミリストイル化タンパク質がオートファジーで分解される基質となっている可能性があり、不良タンパク質蓄積に伴うERファジーの意義に着目して、継続して解析を行う予定である。また、ERファジーを修飾する機構として、ミリストイル化が関与している可能性があり、この意義についても解析を進める予定である。ERファジーに関与する分子機構を探索し、これが心不全に対する新しい治療戦略となり得ると期待される。
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