研究課題
近年、がん治療において分子標的薬が広く臨床応用され予後改善に寄与する一方で、抗がん剤治療により寛解したがんサバイバーが潜在する薬剤性心筋障害による心不全を発症したり、逆に心血管疾患を併存するハイリスク患者が抗がん剤治療を受けて心不全などの心血管合併症を高率に来すことが問題となっている。本研究では、免疫チェックポイント阻害剤の治療が開始されたがん患者において、免疫関連有害事象としての心血管合併症の頻度や重症度を前向きに観察・解析し、マウスモデルを用いてそのメカニズムを明らかにする。単なる免疫チェックポイント阻害剤の副作用としての免疫関連有害事象ではなく、心肥大、慢性心不全や心筋梗塞後といった心血管合併症を有するヒト臨床像に合わせて、マウスモデルを用いて検討する。初年度は、ヒト臨床研究プロトコールを福島県立医科大学倫理委員会で承認を受けた後、免疫チェックポイント阻害剤の投与が予定され、同意が得られた症例の登録を行った。免疫チェックポイント阻害剤投与開始時、3か月、6か月、12か月後で、フォローアップ検査を行った。この観察期間において、臨床的に免疫関連有害事象を発症した症例を認めなかったが、心筋障害を示唆するマーカーである高感度トロポニンI(TnI)の一過性上昇を認めた症例が33%に認めた。BNPの増加を伴っていたが、左室駆出率(EF)の低下は認めなかった。動物実験については、心血管合併症を有するヒト臨床像に合わせて、マウスモデルを作成した。マウスに大動脈縮窄術を行い、コントロールとしてはシャム手術を行った。4週後では左室短縮率の有意な低下および肺重量・体重比は有意な増加を認め非代償性の不全心を呈していた。炎症細胞の評価として、心筋組織における免疫染色を行い、マクロファージの浸潤を多数認め、心不全における炎症細胞としてマクロファージに焦点を当てて、引き続き解析する予定である。
3: やや遅れている
単一施設では、免疫チェックポイント阻害剤の投与を予定されている症例が多くはなく、登録症例数が十分ではなかった。動物実験に関しては、マウスを用いた病態モデルを作成するにとどまり、免疫関連有害事象と関連付けた解析にまでは及んでいないため。
今後、症例数を増やして、臨床像、バイオマーカー、心機能について詳細な解析を行うとともに、保存血清サンプルの解析を予定している。動物実験については、心不全、心筋梗塞の病態マウスに、免疫チェックポイント阻害剤を投与して、免疫関連有害事象に付随する心筋組織の炎症細胞動態の変化を検討する。免疫染色やフローサイトメトリー法による解析を継続して行う方針である。
すべて 2020 2019
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