研究課題/領域番号 |
19K17576
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
木野 旅人 横浜市立大学, 医学部, 客員研究員 (00829608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 / (プロ)レニン受容体((P)RR) / 受容体随伴性プロレニン(RAP)系 |
研究実績の概要 |
心疾患と腎疾患には、『心腎連関』と称する共通する病態があり、その制御による疾病の制圧が期待されている。心疾患の制御は腎疾患の予後を改善し、腎疾患の制御は心疾患の予後を改善するが、病態の全貌は未だ明らかになっておらず、こうした循環調節に関わる生体内システムの詳細を明らかにすることは、『心腎連関』の病態を分子レベルで理解するとともに、新規の創薬標的の解明に繋がることが期待されことから重要である。本研究では、近年明らかにされたRAP(Receptor Associated Prorenin:受容体随伴プロレニン)系に注目して、腎尿細管でのRAP系の機能、『心腎連関』の病態への関与を、遺伝子改変動物を用いた解析を行っている。申請者の研究グループが新規にクローニングした結合尿細管に局在するレニン(alternative renin, ARen)を、上皮細胞に強制的に発現させたトランスジェニック・マウス(ARenTG) 、 (P)RRを、尿細管特異的に強制発現させたトランスジェニック・マウス(Ksp1-(P)RRTG)を使用している。これまでにARenと(P)RRの分子同士の連関ならびに、生体での連関についての報告はなく、RAP系を分子レベルで解明することでRAA系との関連の解明、ならびに新規創薬、薬物治療の開発が期待される。これまでの検討から、KspI-(P)RRTGマウスは、血圧上昇、微量アルブミン尿の増加、尿浸透圧の低下、尿pHのアルカリ化を呈し,降圧薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と直接的レニン阻害薬(DRI)で有意な降圧と微量アルブミン尿の改善が認められた.今後は、Atp6ap2阻害薬であるBafilomycinに対する表現型の変化ならびに、当教室で開発したARen2TGマウスとの交配実験を行い、尿細管における(P)RRの機能を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(P)RR TGマウスにおいて,血圧上昇と微量アルブミン尿の増加ならびに、尿pH, 尿浸透圧の変化を呈する生理学的特徴を明らかにすることができた.また,その効果が(P)RRと構造を共にするAtp6ap2の作用によるものか,Atp6ap2阻害薬である,Bafilomycinによる検討を行う予定である.一部のこれまでの結果では、(P)RR TGマウスに降圧効果は認めず,血圧上昇の機序としてAtp6ap2ではなくRAPが関与していることが示唆された.実験に使用するマウス個体の確保がやや困難であることが挙げられる.(P)RR遺伝子を発現している雄個体は確率として1/4であるが,一度に十分な個体数を繁殖で増やせず,さらなる検討に必要な個体数の確保に、難渋している.その結果、代謝ケージによる生理学的特徴の解析や免疫組織学的解析など,基礎検討が停滞している。
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今後の研究の推進方策 |
まず,(P)RR TGマウスの生理学的特徴である血圧上昇がBafilomycinにより抑制されないことを様々な濃度で再検討を行う.十分に効果があるとされる濃度で血圧降下作用が見られなければ,RAPが血圧上昇の機序に関与していることが示唆される.さらに今後,局所性RAA系で作用していると考えられる新規レニン(ARen)と(P)RRとの相互作用による表現型の変化を解析することで,受容体随伴性プロレニン(RAP)系の生理的・病態生理的な役割をin vivoで検討し,明らかにしていく.繁殖に関しては,動物実験センター技術部と相談しながら環境を整え,集中してスペースを確保し,個体数増に努める.double transgenicマウスの生理学的特徴と免疫組織学的解析を終えた時点で論文化を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの個体数確保が遅延し,実験に使用する予定であった物品費を使用しなかったため,次年度使用額が発生した.マウスの繁殖を積極的に行い,次年度に今年度行う予定であった実験の物品を購入する予定である.
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