研究課題
心筋障害部位での超急性期の代謝の継時的な変化をとらえるために、マイクロダイアラシス法を用いた技術の開発を行った。心臓マイクロダイアリシス法は、半透膜の特性を利用して、心筋間質に存在する低分子生体内物質を、中空糸状透析膜を介して灌流液中に分離採取する方法である。Wistarラットの左室心筋局所にダイアリシスプロープを植え込んで、インジェクションポンプを用いて灌流し、終端より環流液を回収し、質量分析法で代謝産物を網羅的に解析した。10分毎に違うマイクロチューブに集積することで、局所の心筋代謝の変化を連続的に評価することが可能となる。また、マイクロ波を用いた心臓組織の処理技術と同位体元素を用いた定量的代謝フラックスイメージング(代謝の空間的把握)技術を組み合わせ、in vivo 四次元代謝イメージングを行った。虚血時および再還流時に、多くの代謝産物がダイナミックに変化していることが可視化できた。特に、乳酸やアデノシンは、既存の報告と同様に、虚血時に上昇し、再灌流後に徐々に減少する挙動を示しており、本研究がうまくワークしていることが確認できた。得られた結果を用いて、Volcano plotなどの統計分析を行い、細胞外のグルタチオン関連物質(GSH、GSSG等)の有意な変動が明らかになった。これの成果をもとに、グルタチオンの細胞間移動をラットの初代心筋培養を用いて検証した。心筋培養細胞でも、虚血再酸素化時に、グルタチオンが細胞外への放出が経時的に増大した。またグルタチオンの投与は、細胞内のグルタチオン濃度を保持し、虚血再酸素化時の細胞障害を抑制した。
3: やや遅れている
コロナ関係で、実験計画に遅れが生じている。現在、再灌流障害時の代謝産物の細胞内外への移動と虚血再灌流障害の関連を、in vivo, in vitroの系で検証している。
グルタチオンの細胞内外の輸送に関しては、その機序、意義、制御に関しては十分に解明されていない。心筋細胞の虚血再灌流時のグルタチオン関連物質の輸送およびその生理学的意義、また治療応用に関して、ラットの初代心筋培養によるin vitro研究及びin vivo 四次元代謝イメージングを用いて検証する。MitoB/Pを用いたミトコンドリア由来の活性酸素の定量および同位体元素を用いたフラックス解析、メタボローム解析を行い、レドックス状態の時空間的解析を試みて、代謝産物の変動とリンクさせることで、虚血再灌流障害による生体組織の適応機構を検証し、新たな薬剤の開発を進める。また、細胞内外のグルタチオンの移動を制御するトランスポーターを同定し、そのメカニズムの解明を進める
コロナ感染による緊急事態宣言などの関係で、実験の遅延が生じている。本年度は、計画の通り、in vivo, in vitroの研究を進め、論文化を目指す。
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