研究実績の概要 |
本研究の目的は、抜去リード付着心筋やホルマリン固定パラフィン包埋検体 (FFPE検体) など、今まで解析されなかった心筋検体のトランスクリプトーム解析を行うことにより、遺伝性不整脈疾患の解明されていない原因を明らかにすることである。 R1年度は検体を集積した。抜去リード付着心筋は、QT延長症候群1例、洞不全症候群1例、Brugada症候群3例、特発性心室細動1例から得られた。 R2年度は剖検7症例(コントロール4検体、疾患群3検体)の心筋FFPE検体を用いてRNA-Seqを施行した。低クオリティかつ少量であったため3'mRNA-sequencing法を使用したが、検体間でリード数が大きく異なり信頼できる結果を得ることが出来なかった。当施設ではホルマリン処理後の検体を常温保存していたため、RNAの品質が低下した可能性が考えられた。この問題は短期間で改善出来ないため、FFPE検体を用いた心筋RNA-Seq解析は断念した。 R3,4年度はR1年度に得られた抜去リード付着心筋から抽出したRNAを用いてRNA-Seqを施行した。RNAの量が一部不十分であったため、Brugada症候群2例、HCM1例、市販のControl右室心筋のRNAを使用した。Illumina Next-seqを使用しPiard-end 75bpでRNA-Seqを施行、十分なデータが得られた。クラスタリングするとHCM vs Control+Brugada2症例となったため、公開データからControl RVのRNA-seqデータを2症例追加し、Brugada2症例 vs Control3症例で発現変動解析を行ったが、FDR<0.05の設定ではDEGが1個しか検出されなかった。公共データはシークエンス条件が異なっていたため、同条件のControlデータが追加できれば、より正確なデータが得られると考えられた。
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