研究課題
【背景・目的】心原性塞栓症および出血のいずれのリスクも高い,非弁膜症性心房細動(NVAF)症例において,経皮的左心耳閉鎖術は有用な治療選択肢である。しかし,左心耳入口部径が31.5mm以上に拡大すると既存のデバイスでは安全に経皮的左心耳閉鎖術を施行することが困難となる。本研究では左心耳入口部拡大の臨床的特徴,規定因子について検討した。【方法】NVAF1102例において経食道心エコー図検査および心臓CTを行い,左心耳入口部径や,左心耳形態,左心耳血栓や左心耳機能について解析した。通常,経皮的左心耳閉鎖術中には平均左房圧>10mmHgを目安に輸液負荷を行った上で左心耳サイズを計測する。先行研究において500~1000mLの外液負荷により平均2mm入口部が拡大することが報告されていおり,本研究では左心耳入口部最大径30mm以上を有意な左心耳拡大と定義した。【結果】有意左心耳拡大は全体の3.1%,長期持続性心房細動症例の8.9%,本邦における経皮的左心耳閉鎖術の適応条件であるCHADS2スコア2点以上かつHAS-BLEDスコア3点以上を満たす症例の11.3%で認められた。左心耳拡大群は非拡大群と比較し,CHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアが高く,左心耳血栓率が高かった。AF持続の長期化,僧帽弁逆流の増悪,左房拡大,左室肥大に伴い,左心耳入口部は有意に拡大した。【考察】日本における経皮的左心耳閉鎖術の適応を満たす症例の約1割において,既存の左心耳閉鎖デバイスでは安全に治療ができない可能性が示唆された。長期のAF持続および左房負荷につながる因子は,左心耳入口部拡大を促進する可能性があり,それらの因子が左心耳拡大を進行させる前に,経皮的左心耳拡大術を考慮すべきと考えられた。また今後,より大きい左心耳閉鎖デバイスの開発が望まれる。
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Circulation Journal
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