研究課題/領域番号 |
19K17587
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
候 聡志 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00836059)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一細胞解析 / 心筋梗塞 / 心不全 |
研究実績の概要 |
本研究は心筋梗塞の病態理解のため、時間的・空間的なとランスクリプトーム解析を行うことを目標としている。 2020年度は細胞系譜追跡と一細胞RNA-seqを同時にできるようなPolyloxExpress floxマウスを海外の共同研究機関より入手し、繁殖をさせた。心筋梗塞に際しては予備実験の結果、特に白血球と線維芽細胞が増殖することが分かったため、これらをターゲットにして現在CreERT2マウスと掛け合わせを行い、精査していく予定である。また、タモキシフェンの投与量とタイミングによってCreの誘導およびPolyloxカセットの編集が異なってくるが、予備実験で最適な投与量と投与スケジュールを確立することができた。 また、2020年度は心筋梗塞時の心臓内の空間的遺伝子発現制御を調べるため、spatial transcriptome解析を行った。健常時お及び心筋梗塞後1, 7, 14日目の心臓組織に対して解析を行うことで、遺伝子発現情報に基いた各領域の定義を行うことができた。このspatial transcriptome解析と共に、一細胞RNA-seq解析も並行して行い、両者を統合解析した。その結果、梗塞後の超急性期に虚血辺縁領域特異的にメカノストレスに反応する遺伝子群の発現上昇を認め、マウス実験でこれを阻害するとリモデリングが進んで梗塞後心機能が悪化することが分かった。以上から、虚血急性期に生じるメカノストレス反応心筋は心保護的に働くことが分かり、心筋梗塞における治療対象であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心筋梗塞後の空間的遺伝子発現制御解析の方はspatial transcriptome解析が順調に進んでいるため、予定以上に進んでいる。 しかし、細胞系譜追跡の方は2020年4~5月の新型コロナウイルス感染流行時に大学内でのマウス飼育が一時的に中止となった影響で、せっかく繁殖させたPolyloxExpress floxマウスの系統を全て閉じる必要があった。再繁殖許可が出た6月から再度繁殖を再開したが、計画より半年程度、繁殖スケジュールに遅れが生じる結果となった。現在はまた繁殖に成功してCreERT2マウスとの掛け合わせを行っており、今後心筋梗塞モデルを作成して細胞を回収して系譜解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
心筋梗塞後の空間的遺伝子発現制御解析の方は現在行った一細胞RNA-seq解析及びspatial transcriptome解析の統合解析の結果をまとめて、論文投稿する予定である。 細胞系譜追跡の方は現在生まれ始めているCreERT2(Rosa26CreERT2およびCol1a2CreERT2の2種類を用意)とPolyloxExpress floxマウスをかけ合わせた子供を利用して、心筋梗塞モデルの作成を行い、細胞をサンプリングして系譜及び一細胞RNA-seqの解析を行う予定である。既に実験モデルや細胞収集方法自身の予備実験は完了しているため、マウスさえ手に入り次第、すぐさま実験に移していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度である2021年度は系譜追跡及び一細胞RNA-seq解析のため繰り返しシークエンス検査をする予定があり、かなりの試薬費用やシークエンス費用が発生すると考えられるため、これに当てていきたい。
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