本研究は、心不全患者の心筋病理組織画像を機械学習を用いて解析し、リバースリモデリングを予測する新規モデルを構築する。このモデルを用いて、心不全患者のリバースリモデリングを前向きに予測することができるかどうかを検証することを目的とした。 まず、心不全患者の心筋病理組織画像の収集を行い、88例の標本を抽出した。次にこれらの症例の基本情報(年齢、性別、体重。身長など)、臨床情報(基礎心疾患、併存疾患、血液検査所見)、心臓に関する情報(心電図所見、心エコー図所見)、および予後情報(1年後の心エコー図所見、死亡、心臓手術施行の有無、心移植の有無、左室補助デバイスの使用の有無など)を収集し、リバースリモデリングあり、なしのラベル付を行った。そこから画像を解析に適した形式に変換し、また取捨選択を行い、約30000枚の画像で解析を行った。解析にはディープラーニングの手法を用いた学習済みモデルを利用した。本結果は2020年7月開催の日本循環器学会学術総会にて発表された。 今回、分類精度の向上を目的としてCLAHE(Contrast Limited Adaptive Histogram Equalization)等を用い、画像の前処理を行ったが、十分な精度は得られなかった。原因として、対象症例の不均一性(心不全の病因が様々であること)、解析画像の不均一性(染色ムラなど)、ラベルの適切性(リバースリモデリングの定義)などの問題が挙げられ、再度、対象症例の選定、解析画像の選定、画像前処理方法の再検討、ラベル付与の見直しを行い、予測精度の改善に努める。
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