研究課題/領域番号 |
19K17601
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
齊藤 寿郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60648484)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 虚血性心疾患 / mitophagy / autophagy / ミトコンドリア / 虚血再灌流 |
研究実績の概要 |
<背景> 絶え間なく収縮弛緩を繰り返す心臓にとって、ミトコンドリアの品質管理は重要である。mitophagyは主要な品質管理機構だが、心臓においては不明な点が多かった。培養細胞での過剰発現系やuncouplerを使用した研究から、Parkin-Pink1経路が分子機構として注目されたが、生体内においても重要であるか否かは見解が分かれており、心臓の病態生理下でmitophagyがどのような意義を持つか、どのように制御されているかは不明な点が多かった。 <目的> autophagyやmitophagyは栄養飢餓で活性化し、細胞を保護する。心臓の急性期の虚血においてmitophagyが心筋保護に働くか否かを明らかにし、分子機構を解明する。 <方法・結果> レポーターを使用して、遺伝子改変動物の虚血心筋においてmitophagyを定量し、主要な分子機構を同定した。安静時のmitophagyは通常のautophagyに制御されるが、虚血時のそれはUlk1依存性alternative autophagyに主に制御されることを解明した。培養心筋細胞において過剰発現やノックダウンを使用しながら、分子機構の詳細を明らかにした。現在は虚血再灌流のmitophagyについて検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物の虚血心筋においてmitophagyを定量し、主要な分子機構を同定した。培養心筋細胞において過剰発現やノックダウンを使用しながら、分子機構の詳細を明らかにできた。Ulk1によるRab9のリン酸化部位を同定し、リン酸化抵抗性Rab9を発現するノックインマウスを作成して野生型と比較した。ノックインマウスの心臓では虚血においてmitophagyが損なわれ、心筋梗塞が増大することを解明した。一方で通常のautophagyの活性は野生型と比較して不変だったことから、Ulk1によるRab9のリン酸化はmitophagyを特異的に誘導して心筋を保護する、重要な機構だと考えられ、この機構を報告した(J Clin Invest. 2019 Feb 1;129(2):802-819.)。
|
今後の研究の推進方策 |
虚血のみならず再灌流においてmitophagyが増減するのか、それはどのような分子機構で制御されるのかを検討している。現時点では、autophagyやmitophagyが再灌流において心臓を保護するか障害するかは見解が様々である(再灌流時の過剰なautophagyは細胞死を誘導し、有害だと報告がある)。再灌流時に両者を刺激する薬物を投与して、心筋梗塞の増減を評価したところ、mitophagyは心筋を保護し、過剰なautophagyは心筋を障害する結果が得られつつある。 現在は米国から複数種類の遺伝子改変マウスを搬入しており、今後はこれを用いて上記機構を更に解析していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で学会の宿泊費・移動費を抑制することになった。また、米国でのパンデミックを鑑み、予定していた海外からの動物購入・搬入を延期したため、次年度使用額が生じた。 現在は海外の感染状況が落ち着きつつあるので、輸送が可能だと判断し、動物輸送の手続きを再開した。5月末までに国内施設へ搬入されることになっている。他にも動物購入・搬入を予定しており、随時、手続きを開始する。 これらに次年度使用額は使用される見込みである。
|