研究課題/領域番号 |
19K17603
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
濱口 美香 愛媛大学, 医学部附属病院, 医員 (80815928)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大動脈弁狭窄症 / 石灰化 / 弁間質細胞 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
大動脈弁狭窄症は、高齢者において最も頻度の高い弁膜症かつ予後不良の致死的疾患である。唯一の治療法は弁置換術であり、いまだに効果的な薬物治療は確立されていない。我々は、大動脈弁狭窄症発症の分子機序を解明するため、大動脈弁狭窄症患者由来石灰化大動脈弁の網羅的遺伝子発現解析を実施した。その結果、カルシウム・リン代謝の調節機能を有する一つの分泌タンパク質 (Calcification-induced protein1:CIP1と命名した)の同定に成功した。CIP1を介した大動脈弁石灰化の分子機構を解明するとともに、大動脈弁狭窄症発症予測マーカーとしての有用性を証明するための研究を進めている。 まず、弁間質細胞(VIC)の骨芽細胞への分化におけるCIP1の役割を明らかにするために、CIP1遺伝子を過剰発現させるレンチウイルスシステム、CIP1遺伝子発現を抑制するsiRNAシステムを作製した。両方の細胞に対して、骨芽細胞分化を誘導し、リン酸カルシウムの沈着をアリザリンレッド染色により可視化・定量化した。その定量データをコントロール群(empty vector(過剰発現の場合)、Control siRNA(発現抑制の場合))と比較した。なお、ノックダウン効率および過剰発現効率はELISAおよびリアルタイムPCRにより確認した。CIP1の過剰発現およびノックダウンにより石灰化に変化が認められたが、現在再現性の確認および統計学的処理を実施中である。 また、CIP1遺伝子欠損マウスを入手し、交配を継続している。野生型マウス、CIP1遺伝子欠損マウスで大動脈弁狭窄症モデル作製し、エコーを用いた大動脈弁流速の評価、心機能評価、壁厚変化の評価を行なっている。また、大動脈弁狭窄症におけるCIP1のin vivoでの役割を解明するための組織学的解析を今後推進予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
弁間質細胞の骨芽細胞への分化誘導、大動脈弁狭窄症モデルマウス作製に予想外に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
CIP1過剰発現VIC、CIP1抑制VICの骨芽細胞への分化誘導効率を定量的かつ統計学的に評価する。野生型マウス、CIP1遺伝子欠損マウスを用いて大動脈弁狭窄症モデルを作製し、大動脈弁狭窄症の発症・進展におけるCIP1の役割を免疫組織学的に解明する。大動脈弁狭窄症患者100例を予定対象症例数として、ELISAによりCIP1の血清濃度を測定する。大動脈弁狭窄症の重症度、年齢などの臨床学的パラメータとの相関関係を統計学的に解析することで、CIP1のバイオマーカーとしての有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
VICの骨芽細胞分化誘導に難渋しており、予定していたCIP1過剰発現VICおよびCIP1抑制VICを用いた石灰化進行度評価が実施できていないため。また、大動脈弁狭窄症モデルマウス作製にも時間を要しており、予定していた免疫組織学的解析を実施できていないため。これらの実験予算については次年度予算として再計上する事で研究計画を推進する。
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