研究課題/領域番号 |
19K17604
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
篠原 啓介 九州大学, 医学研究院, 助教 (30784491)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌カヘキシー / ミクログリア |
研究実績の概要 |
2019年度の研究実施計画に基づき、癌モデル動物のカヘキシー進行におけるミクログリアの寄与を検討している。 【癌モデルの作成】ラットの腹腔内に癌細胞株AH-130 hepatoma cellsを移植し、心機能障害およびカヘキシーを来すことが報告されている癌モデル動物を作成している。徐々にモデルの安定化が得られてきており、腹水の増加や食餌量・体重の減少、心筋・骨格筋の萎縮が観察されるようになってきた。 【ミクログリアの消去あるいは活性低下】まずミクログリアのアポトーシスを誘導する新規薬剤colony-stimulating factor 1 receptor (CSF1R)阻害薬の慢性脳室内投与により、ミクログリアの消去を試みた。薬剤用量や投与期間などを変更し様々な条件設定を行ったが、結果的には想定していたようにミクログリアを消去することができなかった。そこで、ミクログリアの活性を低下させるために従来用いられてきたミノサイクリンを脳室内に慢性投与し、条件設定を繰り返した。最終的にミクログリアの活性低下に成功した。 【癌カヘキシーの進行におけるミクログリアの寄与】上記癌モデルに対してミノサイクリンの慢性脳室内投与を行い、癌カヘキシーの表現型の変化を観察中である。まだ十分な個体数での確認ができていないが、仮説のようにミクログリアの活性を低下させることにより、食餌量・体重の減少や心筋・骨格筋の萎縮が抑制される傾向にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの安定化(癌細胞の生着や腹水貯留の程度、また心臓の表現型や食餌摂取量・体重の変化)やミクログリアへの介入治療が困難であったため、当初の予定よりは研究成果を得るのにやや時間を要している。しかし、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
モデル作成のさらなる安定化を図り、ミクログリアを介した癌カヘキシー進行抑制の機序を追求していく。具体的には、脳内の摂食代謝中枢ならびに心臓血管中枢の変化や脳内炎症について調べる。末梢組織については、心臓における組織学的評価や生化学的評価の追加や、骨格筋や脂肪組織における生化学的評価を含めた解析を行う。
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