Fontan手術時に静脈圧軽減目的に作成されたfenestration(開窓)は術後遠隔期にfenestrationによるチアノーゼが問題となるため閉鎖を試みるが、試験閉鎖で静脈圧上昇や心拍出量低下がみられる場合は閉鎖することはできない。fenestrationが血行動態に与える影響は患者ごとの心機能、静脈圧、体肺血管抵抗などに大きく依存するため、fenestrationの作成・閉鎖の適応を一律に定めることは不可能である。本研究では最終的にはfenestration作成・閉鎖後の血行動態を予測し、治療適応の判断、治療後の安全なマネージメントを実現することを目的とする。 fenestrationに先立ち、循環平衡の枠組みに心房間交通を組み込んだ数理予測が成立するかどうかをイヌにおける心房中隔欠損モデルで評価した。イヌ6頭において心房中隔欠損閉鎖後の血行動態を高精度で予測することが可能であり、予測モデルの正確性を実験的に立証した(Prediction of hemodynamics after atrial septal defect closure using a framework of circulatory equilibrium in dogs. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2020)。これを同じく低圧系をつなぐ孔であるFontan循環のfenestrationに適応するため、この予測モデルを右室を除いた全身循環に組み込むことでFontan循環予測モデルを作成した。これにより事前にカテーテルデータを入力することでfenestration閉鎖後のFontan循環における血行動態の予測値を得ることが可能となった。解析対象患者のリクルートに時間を要し、研究期間内にFontanモデル予測精度の実証に至らなかった。
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