研究課題/領域番号 |
19K17609
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
君島 勇輔 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (00836702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Pulmonary hypertension / JAK2 V617F |
研究実績の概要 |
我々はJAK2 V617F変異を導入したトランスジェニックマウス(JAK2 V617Fマウス)を用いて低酸素負荷誘発性肺高血圧症を誘導し、肺高血圧に関して野生型マウスと比較した。10%持続的低酸素負荷2週間後、血算、カテーテルによる右室圧測定、臓器重量の測定、肺組織の病理学的検討を行った。コントロールは室内気(normoxia)で飼育し4群で検討した。低酸素負荷2週後の血算では、normoxiaにおいてJAK2 V617Fマウスでは白血球と血小板の著明な上昇を認め、逆にヘモグロビンは低値であり貧血を呈し、骨髄増殖性疾患の表現型を呈していた。低酸素負荷後、両群間でヘモグロビン値に有意差は認めなかった。右室圧はコントロールでは両群間に差は認めなかったが、2週間の低酸素負荷後、右室圧はWTマウスに比べJAK2 V617Fマウスで有意な上昇を示した。肺高血圧症の指標となる右室重量も同様に、コントロールでは両群間に差を認めなかったが、2週間の低酸素負荷後、WTマウスに比べJAK2 V617Fマウスでは有意な上昇を示した。臓器重量では髄外造血を反映し、JAK2 V617Fマウスは肝重量、脾重量が有意に上昇しており、これは低酸素負荷で変化しなかった。肺重量は右室重量と同様の傾向を示した。肺動脈中膜肥厚を評価するためにエラスティカマッソン染色を行った。50~100μmの末梢肺動脈において、低酸素負荷後のJAK2 V617Fマウスでは中膜肥厚の程度が有意に増悪していた。肺動脈の筋性化を評価するためαSMA染色を行った。低酸素負荷では末梢尾肺動脈に動脈の筋性化が誘導されるが、低酸素負荷後のJAK2 V617Fマウスでは、fully muscular groupの動脈の割合が有意に増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAK2 V617F変異を有するトランスジェニックマウスで肺高血圧症が増悪することを示した.
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今後の研究の推進方策 |
近年、体細胞遺伝子変異を有する血液細胞が末梢血液中に出現するクローン性造血が報告されている。我々はJAK2 V617F変異を有するトランスジェニックマウスでは肺高血圧症が増悪することを示したが、JAK2 V617F変異クローン性造血が肺高血圧症に影響を及ぼすかどうかを示すことが今後の課題である。我々はJAK2 V617Fトランスジェニックマウスをドナーとする骨髄移植により、クローン性造血のマウスモデルを作成し、JAK2 V617F骨髄移植レシピエントマウスにおける肺高血圧症について評価する予定である。
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