研究課題
大動脈解離は「突然死」の原因として最重要疾患である。大動脈解離の機序は、大動脈中膜の変性により、剪断応力に対し大動脈が脆弱な状態となるため、一過性の血圧上昇により大動脈中膜の解離が生じ発症すると考えられている。しかし、大動脈解離の前段階である中膜変性の機序は、未だ十分に解明されていない。すなわち、大動脈解離の分子病態機構が未解明であるため、予防法は確立しておらず、大動脈解離を発症して初めて治療が行われているのが現状である。この状況を打開するには、大動脈解離の分子病態機構を解明し、新規分子標的治療法の確立が必要である。本研究の目的は、大動脈解離における中膜変性の分子病態機構を明らかにすることである。そして、解明した大動脈解離の分子病態機構を基に、最終目標である大動脈解離に対する原因治療となる新規分子標的治療法の開発への礎とする。2019年度は、大動脈解離モデルを確立したSpi-B KOマウスを用いて、Spi-Bによって制御されていると考えられる大動脈解離における中膜変性の分子病態機構の解明を試みた。アンギオテンシンⅡによる高血圧負荷実験、病理組織学的・免疫組織化学的解析、RNA-seq解析、遺伝子発現動態の解析、蛋白質発現動態の解析を実験計画に沿って行い、現在中膜変性の分子病態機構の解明が進んでいる状況である。具体的には、Spi-B KOマウスにおいて大動脈解離を発症する原因と考えられる遺伝子・蛋白を突き止めた。現在は、その原因遺伝子・蛋白の制御機構の解明を進めている。
2: おおむね順調に進展している
2019年度は、実験動物を用いて、Spi-Bによって制御されていると考えられる大動脈解離における中膜変性の分子病態機構の解明を試み、実験計画に沿って行い、概ね計画通り進んでいる。
実験動物を用いた大動脈解離の保護的分子病態機構の解明を完結し、その後実験計画に基づいてヒト試料を用いた研究(和歌山県立医科大学倫理委員会承認番号:2287)を進める予定である。具体的には、ヒトにおけるSpi-Bの大動脈解離に対する保護的作用の分子病態機構を明らかにし、ヒトの大動脈解離発症予防に関与するSpi-B発現細胞を検索する予定である。
物品費において、既に所有していた試薬などを流用することが出来たため、支出を抑える事が出来た。しかしながら、次年度(2020年度)においては、新たに購入する必要があり、次年度の物品費の購入費用は予定より高額になる可能性がある。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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