大動脈解離は「突然死」の原因として最重要疾患である。大動脈解離の機序は、大動脈中膜の変性により、剪断応力に対し大動脈が脆弱な状態となるため、一過性の血圧上昇により大動脈中膜の解離が生じ発症すると考えられている。しかし、大動脈解離の前段階である中膜変性の機序は、未だ十分に解明されていない。すなわち、大動脈解離の分子病態機構が未解明であるため、予防法は確立しておらず、大動脈解離を発症して初めて治療が行われているのが現状である。この状況を打開するには、大動脈解離の分子病態機構を解明し、新規分子標的治療法の確立が必要である。本研究の目的は、大動脈解離における中膜変性の分子病態機構を明らかにすることである。そして、解明した大動脈解離の分子病態機構を基に、最終目標である大動脈解離に対する原因治療となる新規分子標的治療法の開発への礎とする。 2019年度でSpi-B KOマウスにおいて大動脈解離を発症する原因と考えられる遺伝子・蛋白を明らかとした。2020年度はその制御機構の解明を進めてその制御していると考えられる細胞を同定することが出来た。2022年度は、2020年度までに得られた実験動物を用いて解明したSpi-Bの大動脈解離における中膜変性の分子制御機構を基に、2021年度より引き続きヒトにおけるSpi-Bの大動脈解離に対する分子病態機構の解明を試みていた。その結果、繊維芽細胞が重要な役割を占めていることが分かり、論文作成の上、投稿している。
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