研究課題/領域番号 |
19K17614
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岡野 裕子 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (90835620)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超常磁性酸化鉄ナノ粒子造影剤 / 冠動脈CT / 不安定プラーク / Dual Energy CT |
研究実績の概要 |
ヨード造影剤(血管内腔)、リン酸カルシウム(石灰化病変)、生牛肉(血管壁プラーク病変)から構成される模擬血管ファントムを作成し、血管壁プラーク病変に見立てた肉部の一部に本研究で用いる新しい超常磁性酸化鉄ナノ粒子造影剤(CMEADM-U)を混入し、Dual Energy CT (DECT)による鉄原子のイメージングでCMEADM-Uを特異的かつ定量的同定することが可能か検討した。 過去の臨床研究でヒトにおいて投与された濃度である0.046mmol/kgを基準にCMEADM-Uと生牛肉を混ぜた箇所にROIを置き鉄原子イメージングで鉄含有量を測定したところ、5mg/mlを添加したロットでは0.2±1.3mgFe/cm3、 25mg/mlでは2.7±1.8mgFe/cm3、 50mg/mlでは12.4±3.3mgFe/cm3であった。鉄濃度が0~20 mgFe/cm3 (2.5step) となるようにカラースケールマップを作成し、 仮想単色X線等価画像の70keV画像にオーバーレイ表示した。CMEADM-Uの集積が画像上で可視的に評価可能であった。また、石灰化の有無によるCMEADM-Uの分布については、石灰化がプラークの近くに存在しても大きな影響はなく、 評価可能であることが示された。さらに血管内腔にヨード造影剤を封入し冠動脈CTとの同時評価の可能性についても検討を行った。その結果, ヨード造影剤が近接していても鉄原子イメージングの画像への影響はなく、ヨード造影剤を用いた冠動脈CTとCMEADM-Uによるプラーク造影は同時に評価可能であると考えられた。 DECTでは, これまでCT値の精度低下の原因とされているビームハードニング効果を抑制する技術が搭載されており周囲物質からの影響を受けにくくなっているが、鉄原子イメージングにおいても同様の効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模擬血管ファントム実験を終了し、順調に経過している。また実験結果も概ね予想した通りの結果であったため今後は当初計画していた動物実験に進む予定であるが、現在COVID-19の感染拡大により実験室における動物実験のための動物の飼育や実験準備が一時中断されている。
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今後の研究の推進方策 |
ファントム実験からDECTを用いることでCMEADM-Uを評価することが可能であることを示したが、今後はin vivoにおけるCMEADM-Uの評価の可能性について検証する。 動脈硬化モデルである渡辺遺伝性高脂血症ウサギに模擬血管ファントム実験をもとに算出した適切な投与量でCMEADM-Uを静脈内投与し、最大5日まで最適な撮影タイミングについて大動脈を撮像し経時的に評価する。5日後大動脈を摘出し、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)、鉄染色(ベルリンブルー染色)、免疫組織化学染色(RAM11によるマクロファージ染色)を施行する。鉄染色陽性部位とマクロファージ染色陽性部位とDECTにおける鉄原子イメージングによる定量評価との比較を行う。コントロールモデルとして通常食を与えたニュージーランドホワイトウサギを用いて同様のことを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定した模擬血管ファントム実験が予想より低金額で順調に終了した。また学会発表による出張もしなかった。次年度は動脈硬化モデルを使用した動物実験を行う予定であり、動物の飼育や動脈硬化モデルの作成、実験時の麻酔、塗擦、病理標本の作製と新しい超常磁性酸化鉄ナノ粒子造影剤の購入費用に使用する予定である。
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