研究課題/領域番号 |
19K17615
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
遠藤 大介 順天堂大学, 医学部, 助教 (50815644)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心房細動 / 左心耳 / Marshall靭帯 / 脳梗塞 / 冠動脈バイパス術 / 心拍動下 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究課題として、①左心耳切除術の有効性、②Marshall靭帯切除の有効性を検証した。 ①左心耳切除術の脳梗塞予防の有効性 2011年から2017年までに当院で実施した心拍動下冠動脈バイパス術 1018例を対象として脳梗塞の発症を調査した。早期脳梗塞を術後30日以内、全期間脳梗塞を早期脳梗塞を含む追跡期間中に発症した脳梗塞とした。574例に同時左心耳切除を施行し、残りの単独冠動脈バイパス術 444例と比較した。術後心房細動の発症率は約30%と2郡間に差を認めなかった。早期脳梗塞の頻度は2郡間に差を認めなかったが、全期間脳梗塞は単独冠動脈バイパス術で有意に高かった (4.5% vs 1.7%)。術後心房細動の有無により層別すると、単独冠動脈バイパス術では早期・全期間脳梗塞ともに術後心房細動を生じた患者郡で有意に頻度が高かった(早期:3.0% vs 0%, 全期間:9.0% vs. 2.6%)。一方で、左心耳切除術では、心房細動の有無に関わらず早期・全期間脳梗塞ともに同等の発症率であった。Cox比例ハザードモデルでは、左心耳切除術を施行していない術後心房細動が全期間脳梗塞の唯一の独立危険因子であった(OR 3.26, 95%CI 1.29-8.26)。 ②Marshall靭帯切除の術後心房細動予防の有効性 2018年1月から2020年4月までに当院で実施した初回の単独冠動脈バイパス術 287例を対象にして、Marshall靭帯切除 n=21、非切除 n=265例を比較した。術後の心房細動の発症は、14.3 vs. 24.3% (p=0.31)と有意差はないもののMarshall靭帯切除で低い傾向にあった。サンプルサイズとして50例が求められるため、2020年度に症例数を蓄積してMarshall靭帯切除による術後心房細動の予防効果を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
左心耳切除術における脳梗塞予防効果は、初期研究からさらに症例数や追跡期間を蓄積することでができた。2019年にポルトガルで開催されたhe 33rd Annual Meeting European Association for Cardio-Thoracic Surgeryで演題採択され、oral presentationを行なった。現在、論文投稿の準備を進めている。 Marshall靭帯切除に関しては、必要とされるサンプルサイズに達しておらず、現段階では統計検定に至らない。2020年に症例数の蓄積が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
Marshall靭帯切除に関しては、サンプルサイズ n=50が必要であるため2020年度内に到達可能な症例数と予測している。切除した病理標本おいても神経線維が含まれることを確認できており、多因子で生じる術後心房細動の自律神経関与に対する抑制効果が期待される。 また左心耳切除に関して、2020-2021年度にかけて切除前後のhANPの変動や切除した左心耳における幹細胞・hANP分泌に関与する細胞の分布を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Marshall靭帯切除症例におけるデバイスの使用数が少なかったため。
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