研究課題/領域番号 |
19K17615
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
遠藤 大介 順天堂大学, 医学部, 助教 (50815644)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Marshall靭帯 / 心房細動 / 開心術 / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究課題として、①心臓術後の遠隔期心房細動リスク、②Marshall靭帯切除の有効性を検証した。 ①心臓術後の遠隔期心房細動の発症リスク 2002年から2019年までに当院で実施した冠動脈バイパス術(弁膜症、大動脈合併手術を含む)のうち、術前リズムが洞調律である2822例を対象として、術後3ヶ月以降に生じた遠隔期心房細動の発症を調査した。術後入院中に生じた心房細動 912例(POAF群)と洞調律 1910例(Sinus群)のうち傾向スコア法を用いて1:1でマッチさせたPOAF群:695例とSinus群:695例を比較した。平均追跡期間は5.8年。マッチング後の2群間の患者背景に差はなく、遠隔期心房細動の頻度は、Sinus群:4.8 % vs. POAF群:13.0%(p<0.01)と有意にPOAF群で高かった。遠隔期心房細動のリスク因子を解析したところ、後心房細動(HR 2.80, 95%CI 1.86-4.22, p<0.01)、脳梗塞既往、術基部もしくは弓部置換術合併が独立危険因子であった。術後10年の心房細動無発症率は、Sinus群は89.4%、POAF群は76.0%であった(Log-rank test: p<0.01)。 ②Marshall靭帯切除の術後心房細動予防に対する有効性の検証 2018年1月から2020年12月までに当院で実施した初回の単独冠動脈バイパス術かつ術前洞調律(ペースメーカーは除く)である323例を対象にして、Marshall靭帯切除 n=28と非切除 n=295例の2群に分けて比較した。術後の心房細動の発症率は、21.4% vs. 23.4% (p=0.81)と有意差を認めなかった。サンプルサイズとして50例が求められるため、さらに症例数を蓄積してMarshall靭帯切除による術後心房細動の予防効果を検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓術後の遠隔期心房細動の発症率に関しては、2020年に開催された34rd Annual Meeting European Association for Cardio-Thoracic Surgeryと第73 回日本胸部外科学会定期学術集会で演題採択され、oral presentationを行なった。 Marshall靭帯切除に関しては、必要とされるサンプルサイズに達しておらず、現段階では統計検定で心房細動の予防効果に対する有効性は証明されていない。2021年にさらなる症例数の蓄積が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
Marshall靭帯切除に関しては、サンプルサイズ n=50が必要であるため2020年度内に到達可能と予測していたが、COVID19流行の影響もあり、必要症例数に到達しなかった。2021年度内に到達可能と予測している。 左心耳切除に関しては心拍動下冠動脈バイパス術において術前洞調律である症例を対象に術後脳梗塞の予防効果を証明できた。生理的な左心耳機能が損なわれる不利益が生じるかどうかに関して、2020-2021年度にかけて左心耳切除前後のhANPやレニンアンジオテンシン系といった内分泌機能に対する影響を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19流行に伴い予想される手術症例数に達しなかった。そのため、予定していたものより実支出額が少なかった。次年度においては手術症例数が回復する傾向にあり、デバイス費用や解析ソフトや解析用パソコンなどに費用を充てる予定である。
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