研究実績の概要 |
本研究では、術前洞調律症例におけるMarshall靭帯切除の有効性ならびに透析患者のLAA閉鎖の有効性を調べた。 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた323例において、Marshall靭帯切除群(28例)と非切除群(295例)で術後AF発症率を比較。発症率は切除群が21.4%、非切除群が23.4%で、有意差なし(p=0.81)。 CKDステージ(G1-5)とLAA閉鎖の有無による遠隔期AF発症率を調査。LAA非閉鎖においてG1-4グループに対してG5グループのAF発症率は有意に高いが(術後10年AF回避率:93.1% vs. 79.6%, p=0.01)、LAA閉鎖においてG1-4とG5グループのAF発症率は同等(術後8年AF回避率:93.8% vs. 97.3%, p=0.91)。 CABGを受けた2,783例のうち、242例が洞調律の透析患者。LAA閉鎖の有無で臨床転帰を比較。傾向スコアを用いて逆確率重み付け(IPW法)を行い、2つのグループは同等の追跡期間を有し、患者背景と手術背景は近似。LAA閉鎖は5年間の脳卒中発症率が有意に低く(ログランク検定、P=0.035)、死亡および脳卒中の調整ハザード比は0.43(95% CI 0.20–0.92;P=0.023)。競合リスク解析では、LAA閉鎖は脳卒中のリスク低減と有意に関連していた(サブハザード比0.26;95% CI 0.08–0.96;P=0.028)。出血のための再手術、術後AF、30日死亡率、および心不全の再入院における調整リスク比に有意差なし。 Marshall靭帯切除による術後AF予防効果は証明されなかった。透析症例において、CABGにおけるLAA閉鎖は出血による再手術や心不全入院を増加させることなく、術後AFを抑制し、全死亡ならびに脳卒中リスクを軽減することが示唆された。
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