研究課題
当院で非小細胞肺癌と診断され、EGFR遺伝子変異検査を実施され、免疫療法を予定している患者を対象に本研究に関する説明と文書による同意を取得した。同意を得た患者から採便キットを用いて糞便サンプルを収集し、マイクロバイオーム解析を行った。同一患者から口腔細菌叢も収集し、比較メタボローム解析を予定していたが、COVID-19の感染拡大に伴い、口腔細菌叢の収集は断念せざるを得ない状況となったため、糞便採取のみ行い、マイクロバイオーム解析に加え、メタボローム解析も実施した。次世代シーケンサーを用いて網羅的細菌群集解析を行い、肺癌患者の糞便中の微生物の全体構成を明らかにした。EGFR遺伝子変異陰性患者における糞便のマイクロバイオームの細菌構成と比較し、陽性患者に特有の微生物種ないし構成パターンの分析を行った結果、EGFR遺伝子変異陽性肺癌患者に特有の糞便細菌叢は認められなかった。しかし、一部の細菌種はEGFR陰性例と陽性例では構成比率が異なっていることが明らかとなった。今後、これらの細菌叢の構成比率が免疫療法の治療抵抗性と関わるのかどうか、免疫療法の効果との関連性を明らかにする予定である。次に、肺癌患者および健常者の糞便を用いてメタボローム解析を実施した。肺癌患者はEGFR遺伝子変異陽性例および陰性例に分類し、健常者と3群による代謝産物の比較分析を行った。その結果、肺癌患者では健常者と比較して特異的なアミノ酸代謝を有し、PCA解析では肺癌患者と健常者に分かれてクラスタリングを形成することが確認された。そこで、肺癌患者と健常者における代謝産物の比較結果をもとに代謝経路の描画を行った結果、肺癌患者では解糖系代謝の亢進に加え、他にも複数の代謝経路の活性化がみられることが確認された。一部の代謝産物ではEGFR遺伝子変異陽性例と陰性例でも活性化の程度に違いがあることが確認された。
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