研究課題/領域番号 |
19K17626
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関根 亜由美 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (30837414)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内皮血球転換 / 組織幹細胞 / 血管内皮細胞 / 血管新生 / 低酸素応答 / 肺循環障害 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症(PH)の発症には組織の線維化や血管新生を含む肺動脈の異常リモデリングが関与している。この過程において、内皮系-間葉系細胞の形質転換(EndMT)はこれまで複数の先行研究(Suzuki et al.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.2017)でも明らかになっている一方、内皮系細胞と造血系細胞間における内皮血球転換(EHT)の分子メカニズムは未だ明らかになってはいない。本研究ではマウス肺高血圧症モデルを用いてこの内皮血球転換(EHT)機構を明らかにすることを大目的に研究を進めている。 初年度よりwild typeマウスを用いてヒトPAHの病態に近いSugen5416+低酸素暴露マウスを作成して解析を行っている。昨年度は新たにマウス右心カテーテル法の確立を行い、詳細な血行動態と肺組織での血管リモデリングの評価を比較して行うことが可能となった。マウス肺組織を用いたα-SMA染色、EVG染色等を用いて、RVSP上昇と一致して筋性化の程度も有意に高くなることを確認した。Runx1及びGATA2陽性/VE-cadherinCD31+CD45-細胞をEHT細胞としてマウス肺を細胞分散後にフローサイトメトリー解析も継続している。昨年度はSugen+低酸素マウスでEHT陽性血管内皮細胞が病勢に一致して高い割合で維持されていることは既に明らかにしたが、Sugenの投与を行わない低酸素暴露モデルではEHT陽性血管内皮細胞は経時的に減少していることが新たに明らかとなった。以上のことは血管内皮細胞を特異的に標識した遺伝子改変マウスであるTie2 GFPマウスを用いた解析でも同様の結果であることを確認した。 以上から、EHT細胞は血管新生が高く病的な血管リモデリング形成期に強く寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はCOVID-19パンデミックの影響を多分に受けた。部局全体として院内の新型コロナ感染症診療に全面的に参画せざるを得ない状況にあった。また、国の非常事態制限下に施設としても一時的に研究活動の停止措置を取られたこと、抗体類の海外からの輸送遅延もあり、全体として研究活動を進める上で大幅に支障を来した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2021年度東京大学医科学研究所の国内研究公募に採択された。本研究で使用中の肺高血圧症モデル肺、低酸素暴露モデル肺、可能であればヒト肺組織手術検体・ヒト血液サンプルを用いて、先方施設にて関連遺伝子やタンパク質の網羅的なシングルセルRNAシークエンス解析を行うことを挙げる。また、セルソーターを用いたターゲットとなる細胞群の詳細な動態解析なども行う方針とする。これまでの知見と併せて本年度中に必要なデータ収集を終了するべく、速やかに実験を遂行していく方針とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックの影響を大きく受けている。部局としてCOVID-19診療への参加により多分にエフォートを取られたこと、施設内での研究停止期間が生じたこと、さらに海外からの抗体・試薬製品の輸送の遅延なども研究活動の中断や大幅な遅延の原因となった。次年度は、国内共同研究先である東京医科学研究所での肺、血液サンプルのRNAシークエンス解析などに繰越金を使用していく方針とする。
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