研究課題
気管支喘息は、気道の慢性炎症で特徴づけられ、気流制限の強度とともに臨床症状が変化する。発症の危険因子には、遺伝的素因と環境因子が挙げられる。後天的な要因が個体へ影響を及ぼすメカニズムには、エピジェネティクス(DNAの塩基配列変化を伴わない遺伝子発現の多様性)の関与が指摘されている。気道のリモデリングは喘息を難治化させるが、エピジェネティクスの研究がステロイド抵抗性を克服し、モデリングを制御しうる手段としても期待がもたれてきた。本研究は、新たな喘息の治療ターゲットを見出すため、気道上皮の自然免疫応答に影響を与えるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を同定し、ヒストン修飾で制御を受ける炎症性・抗炎症性の分子を探索することを目的としている。さらに上皮間葉転換を抑制するモデルを並行して分析し、HDACが関与する気道炎症の分子機構との共通点あるいは相違点を明らかにしようとしている。ダニによるマウスモデルにおいては、幾つかの濃度のHDAC阻害剤の投与においては好酸球数の変化を認めなかった。さらなる条件検討が必要であるが、気管支喘息にはヒトにおいて好中球性などのフェノタイプが存在していることに視点を切り替え、好酸球以外の炎症指標の変化を分析していく。ヒト気道上皮細胞をダニ抗原で刺激した実験系では、HDAC阻害剤が炎症性サイトカインを抑制する結果が得られたため、詳細な分子メカニズムの解析を進めていく予定である。
4: 遅れている
マウスモデルにおけるHDAC阻害剤の選択および条件検討が遅れている。
次年度に繰越し、マウスモデルにおける他の炎症指標、およびヒト気道上皮の詳細な分析により注力していく。
翌年度も引き続き実験を継続するため。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
BMJ Open Respiratory Research
巻: 7 ページ: e000634~e000634
10.1136/bmjresp-2020-000634