本研究では、肺上皮細胞特異的活性型mTORマウスを用いて、肺上皮細胞におけるmTOR経路の役割を直接的に解析した。その結果、活性型mTORマウスの肺は無刺激では野生型に比し明かな表現型の変化は認めなかったものの、ブレオマイシンマウスモデルを作成すると、病理学的にも生理学的にも肺線維化の増悪をきたすことが証明された。また、活性型mTORマウスの肺では、ZO-1やCav-1の発現低下を認めており、タイトジャンクションを介した肺線維症増悪機序への関与が示唆された他、網羅的発現解析によりmTOR経路下流に位置するANGPTL4を見出した。in vitroでの解析により、mTORの活性化及びANGPTL4がタイトジャンクション脆弱化及びEMT促進に関与することが示唆された。以上より、肺上皮細胞におけるmTOR経路の活性化は肺線維化を促進する因子であり、またANGPTL4が肺線維症の治療ターゲットになり得る可能性が示唆された。
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