研究課題/領域番号 |
19K17636
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
二見 悠 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40836409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サルコイドーシス / 血清バイオマーカー / エクソソーム / 難病 / プロテオミクス / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
サルコイドーシス(サ症)は非乾酪性肉芽腫が全身に形成される原因不明の難病である。自然治癒する症例もあるが、肺、眼、心臓に病変を生じ臓器障害を来す予後不良症例も存在する。2015年新たに始まった難病対策において、対象331疾患のうち、呼吸器系難病は14疾患で、有効な治療法やBMは確立していないのが現状である。なかでも、サ症の血液マーカーとして代表的なものに血清ACE値,可溶性IL-2レセプター(sIL-2R)がある(2015年臨床診断基準項目)が、感度・特異度とも満足できるものとは言えず、より優れたマーカーが必要とされている。 エクソソームは種々の細胞から分泌されるエンドソーム由来の細胞外小胞顆粒であり、細胞間の情報伝達手段として各疾患において注目されている。サ症患者と健常人の血清からエクソソームを単離しプロテオミクスを駆使する事で疾患特異的、臓器特異的で予後予測可能なBMの開発、さらには病態解明を目指す事が本研究の目的である。我々は以前より炎症性呼吸器疾患におけるエクソソーム解析に取り組み、エクソソームの単離・定量から解析に至るまでシステムを構築して来ている。慢性炎症モデル(COPD)マウスから単離したエクソソームの最新定量プロテオミクスから2000種類という世界トップクラスの蛋白を同定するだけでなく、疾患エクソソームのプロフィールが病態を反映すること、さらにターゲットプロテオミクスSRMにて新規BMを同定した。さらに同様の手法をヒトに発展させて、COPDや喘息患者のBM同定にも成功し、手法を確立しつつある。サ症患者の末梢血由来エクソソームから最新プロテオミクスの技術と従来の測定方法(ELISA, Western Blotting等)を組み合わせる事により、診断、病状把握、治療に関する画期的なBMを見出すことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サ症患者7例と健常者5例の血清からエクソソームを単離し、ノンラベル・定量プロテオミクスにより2292種類もの蛋白を同定した。バイオインフォマティクスによりこれらの蛋白のプロファイルは肉芽腫形成に関わるpathwayを反映する事が示唆された。さらにバイオマーカー 候補蛋白を50種類に絞り、サ症患者50例と健常者10例の血清エクソソームに対してターゲットプロテオミクスによる解析を行った結果、CD14,LPS-binding protein(LBP)がバイオマーカー となり得ることを見出した。Western Blottingにより別の患者群でも再現性を確認した上で、さらに肉芽種組織での発現の確認を免疫染色で行った。 またin vitorではマウスの単球マクロファージ細胞にLPS刺激を加えて多角球を誘導する系で、細胞および細胞上清エクソソーム中の両蛋白の発現を確認し、肉芽種形成にエクソソームの関与が示唆される結果を得た。 また実臨床の観点からはROC解析により従来のバイオマーカー との比較も行なっており、併用する事で診断率を向上する事が可能と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により血清エクソソームに関してCD14,LBPという2種類の蛋白がバイオマーカーとなり得る事は再現性をもって確認できたが、予後予測や重症度との相関については患者群のサンプルサイズや偏りなどにより明確な関係は示唆されなかった。可能であれば患者数を増やして検討していく必要がある。 また確定診断のバイオマーカー として臨床応用可能なサンドイッチELISAキットの作成ができるかどうか、最適な抗体を見つけるため種々の抗体を用いて検討している段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
順調に研究が進行したため試薬や解析にかかる費用を節約できたため差額が生じたと考える。今後臨床応用可能なキットを開発していく上で、最適な抗体の組み合わせを検討したり条件検討などの予備実験に費用がかかると考えている。
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