サルコイドーシス(サ症)は非乾酪性肉芽腫が全身に形成される原因不明の難病で、血清バイオマーカー(BM)に、ACEやsIL-2レセプターがあるものの、感度・特異度ともに十分ではなく、新たなBMの開発が急務とされる。種々の細胞が分泌するエンドソーム由来の細胞外小胞エクソソームに最新プロテオミクスを駆使することで、血清プロテオミクスでは捉えられない膜蛋白を同定できる事を利用し、疾患特異的、臓器特異的、治療予測可能な画期的BMの開発と病態解明に挑戦した。まずサ症患者7名と健常人5名の血清からエクソソームを単離しLC-MS/MSによる網羅的解析で2292種類の蛋白を検出し、2群間で有意差のある366蛋白を見出した。それらの蛋白から統計学的解析、文献的考察を踏まえ25蛋白に候補を絞り混んだ。次にサ症患者50名と健常10名の血清からエクソソームを単離し、ターゲットプロテオミクス(MRM)により25蛋白の発現量を測定した。その結果、CD14とLBPがサ症の血清エクソソームで優位に上昇していた。ウェスタンブロットや免疫電験などで検証すると共にサ症患者の肺や縦隔リンパ節の肉芽腫においてこれらの蛋白が高発現している事を捉えた。またin vitroでマウスの単球細胞にLPS刺激を加えて肉芽腫の主体となる多核巨細胞を誘導すると、細胞内のCD14、LBP発現が亢進すると同時に細胞上清に含まれるエクソソーム中の発現も亢進する事が分かった。サンプル数、症例の偏りの問題もあり重症度予測、臓器特異性や治療予測などの項目に関しては評価が不十分であるが、診断マーカーとしての感度、特異度は両者ともAUCが0.8以上で従来のBMに劣らない結果であった。またCD14に関してはACEやsIL2Rと相関がなく、従来のBMと組み合わせて使用する事で診断率を向上させる事ができるという点で臨床的に有用と考えられる。(論文投稿中)
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