誘発喀痰上清中のCCL15の濃度は、気管支喘息患者において健常者と比べ有意に高く、気管支喘息患者の誘発喀痰上清中のCCL15濃度と血清ペリオスチン濃度との間には有意な相関が認められた。これにより、気管支喘息患者の気道においてCCL15の発現が亢進しており、気道中のCCL15は気管支喘息の診断や気道炎症の指標として役立つバイオマーカーとして有望であり、またCCL15は特に気道炎症や気道リモデリングといった気管支喘息の主病態および難治化に関わっている可能性があることが示唆された。 続いて、喘息モデルマウスを用いた研究を行うこととしたが、CCL15はマウスには存在しないため、他のヒトCCL15に関する研究と同様に、ヒトCCL15のマウスにおけるオルソログ(相同遺伝子)であるCCL9を用いて、マウスにおける研究を行った。マウス気道におけるCCL9発現の程度を気管支肺胞洗浄液(BALF)中のCCL9濃度の測定により、また気道におけるCCL9発現部位の同定を肺組織のCCL9免疫染色を用いて、喘息モデルマウスとコントロールマウスとを比較することで検討した。すると、喘息モデルマウスではコントロールマウスと比較してBALF中のCCL9濃度は有意に上昇しており、また喘息モデルマウス肺組織におけるCCL9免疫染色で、気道上皮細胞,気道平滑筋細胞,血管内皮細胞,気道上皮下の炎症細胞にCCL9が発現していることを確認した。以上より、喘息モデルマウスの気道においてCCL9の発現が亢進していることが示され、マウスCCL9(ヒトCCL15)は喘息の病態へ関与している可能性が高いと考えられ、喘息の新規バイオマーカーとして有望であり、喘息の治療標的となる可能性が示唆された。 次に、喘息モデルマウスにおいてCCL9を標的とするsiRNAを用いて、気道のCCL9の経気道的ノックダウンを試みたが、達成できなかった。
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