ラット正常肺、あるいはTGFbeta1強制発現ベクターを用いて作成したラット線維化肺から脱細胞化組織を作成した。それら剛性の異なる脱細胞化肺組織をラット正常肺組織由来のfibrocyteで再細胞化し培養したところ、線維性脱細胞化肺組織での培養は、正常脱細胞化肺組織での培養と比較してfibrocyteのmiR-21発現を増加させた。更に線維性肺脱細胞化肺組織のホモジネートから作成した細胞外基質(ECM)抽出物はfibrocyteのmiR-21発現を増加させた。 線維性肺脱細胞化肺組織のホモジネートと、正常肺脱細胞化肺組織のホモジネートに含まれている既知のECM成分を比較したところ、線維化肺由来のホモジネートにはより多くのヒアルロン酸が含まれていた。FACSで検討したところヒアルロン酸の受容体であるCD44がfibrocyteには発現していることが判った。ヒアルロン酸をfibrocyteに投与したところ、miR-21発現が増加し、CD44の中和抗体によってその効果が抑制されたことから、線維性肺組織により多く含まれるヒアルロン酸がfibrocyteのmiR-21発現の増高に寄与している可能性が考えられた。 また、線維化肺組織におけるECMは、その成分構成のみならず、組織の弾性をも変化させている。そのため、柔らかい細胞培養用ハイドロゲル上(matrigen softwell)でfibrocyteを培養して、通常の硬性培養皿上での培養と比較したところ、硬性の培養皿上での培養はfibrocyteのmiR-21発現を増加させた。 これらの結果は、fibrocyteが線維化肺組織内で構築された異常なECMの影響を受けて、線維化促進性miRNAの発現量を変化させている、という研究代表者らの仮説を支持する結果であった。現在、追加研究を行うと同時に、既存の結果をまとめたものを論文化し投稿中である。
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