小細胞肺癌は、初期治療には良好な治療反応を示すが、その多くの症例で、再発や遠隔転移を認める。再発や遠隔転移をきたした症例に対する有効な治療法は限定的であり、患者の生命予後は極めて不良である。小細胞肺癌が、治療抵抗性を獲得し、再発・遠隔転移を起こす分子メカニズムを明らかにする事が、本疾患の治療法の開発に繋がると考える。ヒトゲノム解析研究の成果として、ヒト細胞中には極めて多くの蛋白に翻訳されないRNA分子が転写されている事が明らかとなった。機能性RNAの1種であるマイクロRNAは、機能性RNA(蛋白コード・非蛋白コード遺伝子)の翻訳阻害や直接分解によりその発現制御をしている。1種類のマイクロRNAは、数十~数百種類の機能性RNAの発現を制御している事から、マイクロRNAの発現異常は、細胞内の機能性RNA分子ネットワークの破綻を引き起こし、ヒト癌を含む様々な疾患に関与している事が報告されている。申請者は、治療後に遠隔転移をきたし亡くなった小細胞肺癌患者・剖検検体(3症例)から、次世代シークエンサーを用いて、機能性RNA(マイクロRNA、蛋白コード遺伝子、非蛋白コード遺伝子)発現プロファイルを作製した。現在、治療抵抗に至った患者血液検体からエクソソームを分離し、エクソソーム由来のマイクロRNA発現プロファイルを作製している。これらプロファイルの比較から、癌組織・転移組織・エクソソームにおいて高頻度に検出されるマイクロRNAを見出した。本研究では、発現が亢進しているマイクロRNAが、小細胞肺癌の治療抵抗性・再発・遠隔転移に重要な役割を担っていると仮定し、その検証を行う。更に、マイクロRNAを起点として、小細胞肺癌における新規癌促進分子経路の探索を行う。本研究の成果は、治療抵抗性・小細胞肺癌に対する新規治療法の開発に向けて有用な情報を提供できると考える。
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