COPDとIPFはいずれも加齢が発症危険因子である老化関連肺疾患であり、高率に肺がんを合併する難治性疾患である。近年、100nm前後の細胞外小胞であるエクソソームは、新たな細胞間情報伝達物質として注目されており、老化細胞から分泌されるエクソソームはSASPとしての特徴を有して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や特発性肺線維症(IPF)の病態、さらには合併するがんの微小環境制御や悪性化に深く関わっている可能性が考えられる。本研究は、老化細胞由来エクソソームの肺がんに対する役割を解明し、エクソソームに注目した新規バイオマーカーによる病態評価及びこれら難治性肺疾患合併肺がんの治療戦略の確立を目的とした。 まずエクソソームの共通マーカーをIPF患者の肺組織および正常組織との発現評価を行った。その結果、エクソソームマーカーは正常気道上皮において高発現しており、さらにIPFのfibrotic fociにおいても高発現していることが分かった。これらIPFの線維病変からエクソソームが多く分泌されている可能性を示唆していた。次に、IPF由来の線維芽細胞に着目した。IPF由来線維芽細胞はその機能評価にて正常の線維芽細胞と比較して老化が誘導されていた。この老化した線維芽細胞分泌エクソソームの機能評価を行った。肺癌細胞株にこれらのエクソソームを添加してみたところ、肺癌細胞株の細胞増殖を亢進することが分かった。in vitroおよび臨床サンプルを用いた本検討から、老化細胞由来エクソソームがその内包物を介して肺癌の病勢悪化に関与する可能性が示唆された。特にmicroRNAによる肺がんの遺伝子制御が悪性化の重要なメカニズムであることを発見することができた。
|