研究課題/領域番号 |
19K17652
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
柏田 建 日本医科大学, 医学部, 助教 (50754991)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 薬剤性肺障害 / Rhoキナーゼ / 急性呼吸窮迫症候群 / ボルテゾミブ |
研究実績の概要 |
多くの肺疾患において血管透過性亢進の病態の重要性が示されている。血管透過性は内皮細胞間接着により制御されるが、炎症時には炎症性メディエータが低分子量G蛋白質“Rho”を介し、内皮細胞間接着を破壊し血管透過性を亢進する。 プロテアソーム阻害剤「ボルテゾミブ」は、ARDSと類似した「血管透過性亢進」を主病態とした肺障害を来すが、同薬では、プロテアソーム阻害によるRho分解抑制が起こり、血小板減少を生じると報告されている。申請者は、上記背景から「ボルテゾミブは、内皮細胞のRho蛋白質の蓄積により、炎症時のRhoシグナルを増強し、血管透過性亢進型の肺障害を惹起する」という仮説を立案した。
本研究は上記仮説を検証し、Rho依存的な内皮細胞の透過性制御の機序を究明するものである。現在まで、内皮細胞を用いた実験により、ボルテゾミブにより内皮細胞内にRho蛋白が蓄積すること、ボルテゾミブによりRho依存的にストレスファイバーが形成され、細胞間接着が阻害されること をウェスタンブロッティング、免疫染色、バイオイメージング、透過性アッセイ等の方法で検証している。結果として、1ウェスタンブロッティングでRho蛋白がボルテゾミブ刺激により増加すること、2免疫染色やバイオイメージングでボルテゾミブ投与により内皮細胞のストレスファイバーが増加すること、3透過性アッセイでボルテゾミブ投与により血管内皮細胞の透過性が亢進することを確かめている。
現在、炎症性メディエータを用いた実験を行っており、ボルテゾミブとの相乗的な増強を解析している。 また、ボルテゾミブが肺血管の透過性を亢進するか、マウスを用いたin vivo実験による検証も開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroの実験については、おおむね仮説に準じた結果が得られている。 しかし、in vivoについて、ボルテゾミブでの肺障害モデル作成が成功していない。
|
今後の研究の推進方策 |
現状の実験を継続する。ボルテゾミブのマウスモデルについては肺障害が認められておらず、炎症性メディエータとの併用による相互作用を用いたモデルなどの作成を検討する。 また、他モデル動物への変更を検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究所でin vitroの研究に用いている、内皮細胞や透過性キット、ウエスタンブロッティング、プルダウンアッセイなどの消耗品は、いずれも所属研究室の他研究と共用している部分が多いため、研究者の科研費からの使用が予定に達しなかった。 本研究で用いた研究費は、計算して科研費より支出をするよう、算定や計上の状況を整えていく必要がある。また、研究の進捗を急ぐとともに、進捗に準じて使用状況を調節していく。
|