多くの肺疾患において血管透過性亢進の病態の重要性が示されている。血管透過性は内皮細胞間接着により制御されるが、炎症時には炎症性メディエータが低分子量G蛋白質“Rho”を介し、内皮細胞間接着を破壊し血管透過性を亢進する。 プロテアソーム阻害剤「ボルテゾミブ」は、ARDSと類似した「血管透過性亢進」を主病態とした肺障害を来すが、同薬では、プロテアソーム阻害によるRho分解抑制が起こり、血小板減少を生じると報告されている。 申請者は、上記背景から「ボルテゾミブは、内皮細胞のRho蛋白質の蓄積により、炎症時のRhoシグナルを増強し、血管透過性亢進型の肺障害を惹起する」という仮説を立案した。本研究は上記仮説を検証し、Rho依存的な内皮細胞の透過性制御の機序を究明するものである。 結果として、1Rho蛋白がボルテゾミブ刺激により増加した。2ボルテゾミブ投与により内皮細胞のストレスファイバーが濃度、時間依存的に増加した。3ボルテゾミブは内皮細胞において、Rho依存的に内皮細胞間接着の破綻をきたす。4ボルテゾミブの内皮細胞ストレスファイバー形成は、炎症性メディエータと相乗的な効果がある。点を見出した。 ボルテゾミブがプロテアソーム阻害作用を介し、内皮細胞にRho蛋白質を蓄積させることが、炎症時のRho活性化をより強い反応とすることが、肺障害の原因となることが示唆された。それらの結果を、日本呼吸器学会総会に発表し、論文投稿中である。
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