研究課題
肺癌の分子標的治療は目覚ましい進歩を遂げたが、アンメットニーズとしてKRAS変異肺癌(非小細胞肺癌の10%)と小細胞肺癌については未だ有効な治療法がない。MicroRNAは標的遺伝子の3’非翻訳領域と結合することで蛋白発現を制御し、細胞増殖や分化に関与する。これまでにKRAS変異型大腸癌においてmiR-4689が抗腫瘍効果を発揮したことから、本研究では肺癌に対する効果を検討した。細胞株はKRAS野生型として粘表皮癌細胞H292、H1925(EGFR変異あり)、小細胞癌SBC3、KRAS変異型として肺腺癌細胞H441、A549細胞を用いた。更にH292にKRAS変異遺伝子を導入し、H292 KRAS変異株を樹立した。MiR-4689はH292(KRAS wild), SBC3, H441の細胞増殖を抑制したが、H292 (KRAS mut), A549, H1975に無効であった。H292 (KRAS wild) とH292 (KRAS mut) のsmall RNAを抽出しmicroRNA seqを行った。KRAS変異型で2分の1以下に発現減少する12種類のmiRNAを選択し、KRAS変異株に添加した時に抗腫瘍効果を示すmiRNAを探索した。4種類のmiRがKRAS wild H292に比べてKRAS mut H292に高い抗腫瘍効果を示した。このうちmiR-329-3pは小細胞癌SBC3を含む全ての肺癌細胞に有効であった。以上から、肺癌治療のアンメット領域においてmiR-329-3pは次世代の肺癌治療剤として期待されると考えられた。
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Cancer Science
巻: 111 ページ: 2895~2906
10.1111/cas.14523