研究課題/領域番号 |
19K17654
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
祢木 芳樹 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (70814515)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / がん免疫療法 / 血管新生阻害剤 |
研究実績の概要 |
悪性胸膜中皮腫(Malignant Pleural Mesothelioma: MPM)は診断から死亡までの生存期間中央値が7.9カ月と極めて予後不良の難治性悪性疾患である。MPMに対する化学療法は、長らく進歩がなかったが、2018年に化学療法後に再増悪したMPM症例に対する抗Programmed cell death (PD)-1抗体Nivolumabの使用がわが国で保険適応となり、がん免疫療法はMPMにおいても新たなbreakthroughとなると期待される。MPMにおけるがん免疫療法の更なる発展のため、今回、血管新生阻害剤との併用療法に注目した。 血管新生に関わる最も重要な因子である血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)は肺癌、大腸癌、卵巣癌などで治療標的分子となっているが、VEGFは直接的に細胞障害性T細胞(Cytotoxic T cell: CTL)の増殖を抑えるだけでなく、樹状細胞(Dendritic Cell: DC)の成熟化を妨げ、制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)を活性化することで、CTLを機能的にも抑制していると言われている。本研究で、代表者は抗PD-1抗体が惹起するCTLによる抗腫瘍免疫を、VEGFを阻害する血管新生阻害剤が、数的かつ機能的に賦活化する事で、MPMに対するがん免疫療法の効果が増強されるかを、MPMのマウス皮下腫瘍モデルで検証し評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MPMに対する抗PD-1抗体と血管新生阻害剤の併用療法の検証のため、マウスの抗PD-1抗体としてはRMP1-14を、血管新生阻害剤としてはVEGF受容体阻害剤であるNintedanibを使用した。Balb/cマウスの皮下にマウスMPM細胞AB-1を移植し、腫瘍体積が100mm3に達したのを確認して、control群(IgGとvehicle)、Nintedanib群、抗PD-1抗体群、Nintedanibと抗PD-1抗体併用群の4群に分けて治療実験を行った。その結果、Nintedanib群、PD-1抗体群、併用群でcontrol群に比べ、有意に腫瘍の増大を抑制した。特にNintedanib群と併用群においては、腫瘍がほぼ完全に消失する個体も存在し、強い抗腫瘍効果が確認された。この結果は、現在すでにMPMにおいて実臨床でも用いられている抗PD-1抗体Nivolumabの抗腫瘍効果を確認する結果ではあったが、予想以上に抗PD-1抗体の単独での抗腫瘍効果が強く、Nintedanibとの併用の意義についての検証が困難となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
血管新生阻害剤と抗PD-1抗体の併用療法について、synergisticな効果をより検証しやすくするため、現在、抗体の投与量や治療開始の時期について検討を加えると共に、別のMPM細胞AE17も使用して、よりreproducibleな結果が得られるよう検証している。既に動物実験計画書の上記修正については、動物実験委員会の承認を得ており、速やかに研究計画を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、マウスMPM細胞AB-1を用いた皮下腫瘍モデルにおけるin vivoでの抗PD-1抗体RMP1-14の効果が予想以上に高く、血管新生阻害剤との併用療法の抗腫瘍効果の検証が困難となったため、同様の実験を繰り返したり、さらにそのメカニズムを検証するために想定していた実験を行うまで到達せず、差額が生じる結果となった。次年度は、別の細胞AE17細胞を用いて、in vivoでの抗腫瘍効果を検証する必要もあるため、本年度の残額を繰り越しし、次年度に使用させて頂く予定である。
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