研究実績の概要 |
抗原変異インフルエンザウイルスにも有効な“交差防御抗体”の誘導を目的としたユニバーサルワクチン開発が、近年精力的にに進められている。申請者はこれまでウイルス感染後の交差反応性B細胞の発達について研究を進めてきた知見を元に、従来HAスプリットワクチンに簡便な処理を施すことで抗原構造を変化させ、交差防御抗体を効率的に誘導可能な新規ユニバーサルワクチン剤形(膜融合型HAスプリットワクチン)の提案に成功している。そこで本研究では、新たなワクチンデザイン戦略における科学的基盤の整備に向け、生体内における抗原の構造変化に焦点を当て、肺組織にユニークな交差反応性B細胞の選択機序の解明を目的として研究を進めた。 本年度では、生体内において抗原構造の変化を検証するため、抗原特異的B細胞のシングルセル培養システムを用いて、ウイルス感染後の各組織(肺、リンパ節、脾臓)で選択された交差反応性B細胞の大規模モノクローナル化(各200クローン程度)を行った。得られた交差モノクローナル抗体の、通常HA・膜融合型HA抗原への結合度を比較検証したが各組織間において結合度に差は見られなかった。そこで更に株特異的(交差反応性の無い)B細胞のシングルセル培養を行い、株特異的モノクローナル抗体の通常HA・膜融合型HA抗原への結合度を調べた結果、株特異的抗体においても膜融合型HA構造により強く結合する複数クローンが肺組織で確認できたものの、組織間での結合度の有意な差は見られなかった。 そこで次に、抗原提示細胞(濾胞樹状細胞)上における抗原の構造を直接的に検証するために、濾胞樹状細胞の調整・単離条件を検討した。これまでの報告のあるマーカーCD45-, CD21+に加え、FDC-M2, PDPN, CD31, ICAMで更に細胞集団の細分化を行い、フローサイトメトリでモデル抗原(PE)が細胞上に存在することを確認した。
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