研究実績の概要 |
1) 一般人口を背景とした約7,000人の大規模ゲノムコホートにて、糖尿病の発症・増悪における睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome: SAS)の寄与を横断かつ縦断的に解析している。コホート研究において重症SASと糖尿病の家族歴を有する場合に、どちらか片方のみを有する場合と比較して、糖尿病のリスクが相乗的に高くなる事実を見出した。SASと糖尿病の遺伝背景が相乗的に糖尿病発症・増悪に影響を与えていると仮定して、約80個の糖尿病感受性遺伝子とされる一塩基多型より遺伝的リスクスコア(Genetic risk score: GRS)を、遺伝子情報が解析されている4,176人にて算出した。横断的な多変量解析においてGRSはHbA1cにBody Mass Indexと同等程度に寄与していた。今後、縦断的なデータを含めて、糖尿病とSASの関連が糖尿病GRSによって変化するか否かを検証する。 2) 上記コホート研究において得られたデータをもとに、糖尿病腎症早期に出現する微量尿中アルブミン量とSASの関連性を検証した。多変量解析にて、SASの重症度の指標である3%酸素飽和度低下指数(oxygen desaturation index: ODI)は尿中アルブミン量に対して独立した正相関を認めた。(β = 0.07, p < 0.001) さらに、3%ODIと平均血圧は尿中アルブミン量へ正の交互作用を有することが示された。(β = 0.08, p < 0.001) SASと高血圧は相乗的に尿中アルブミン量の上昇に寄与しており、高血圧患者でSASを評価することで将来に腎不全に陥る患者を抽出できる可能性が示された。この結果は米国胸部疾患学会にて報告した。
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