研究実績の概要 |
(1)一般人口を背景とした約7,000人の大規模ゲノムコホートにて、糖尿病の発症・増悪における睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome: SAS)の寄与を横断かつ縦断的に解析している。糖尿病腎症早期に出現する微量尿中アルブミン量とSASの関連性を検証した。多変量解析にて、SASの重症度の指標である3%酸素飽和度低下指数(oxygen desaturation index: ODI)は尿中アルブミン量に対して独立した正相関を認めた。(β = 0.06, p < 0.001) さらに、3%ODIと平均血圧は尿中アルブミン量へ正の交互作用を有することが示された。(β = 0.06, p < 0.001) 夜間睡眠中の血圧を交絡因子として多変量解析に含めても、尿中アルブミン尿と3%ODIには有意な関連が認められた。(β = 0.05, p < 0.001)SASと高血圧は相乗的に尿中アルブミン量の上昇に寄与しており、高血圧患者でSASを評価することで将来に腎不全に陥る患者を抽出できる可能性が示された。また、SASは夜間の血圧上昇以外の機序でも尿中アルブミン上昇と関与していることが示唆された。この結果は現在論文投稿中である。 (2) 同じコホートにおいて遺伝子解析が終了している約3,000人において、糖尿病の遺伝背景の検証については、既報(Suzuki K et al. Nat Genet. 2019)をもとに、約80個の糖尿病感受性遺伝子とされる一塩基多型より遺伝的リスクスコア(Genetic risk score: GRS)を算出した。GRSは正規分布をとり、BMIと同様にHbA1cと相関していた。横断解析において算出されたGRSはHbA1cにBody Mass Indexと同等に寄与していた。今後解析対象者を増やして最終結果を導く予定である。
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