研究課題/領域番号 |
19K17678
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
田宮 暢代 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研修員 (30569041)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | COPD / 線毛細胞 / 前駆細胞 / ステムセルエイジング / 健康寿命 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease :COPD)のマネージメントにおいて、気道感染症予防は鍵である。気道での粘液線毛クリアランスの低下は、気道感染症リスクとなるため、その評価が、感染防御において重要である。本研究では①ヒト初代培養気道上皮細胞におけるCOPD群と非COPD群での線毛機能評価・分化誘導の差異(杯細胞/線毛細胞比)について、②前駆細胞のステムセルエイジングの差異について、③COPD群で長期薬剤負荷培養による分化やステムセルエイジングへの影響も網羅し、新たなCOPDの疾患概念の構築と革新的治療を開発し、健康寿命を延ばす治療を目標とする研究である。 気管支内視鏡検査時に気管支擦過で採取したヒト気管支細胞から前駆細胞を精製、Air Liquid Interface(ALI)培養し、 線毛運動の評価(線毛運動周波数な らびに線毛運動振幅角を測定)、電子顕微鏡による線毛形態変化・気道細胞分化評価・エイジングマーカー評価をCOPD群・非COPD群間で行うことを目的とする。 また、採取患者の喀痰咳嗽症状スコア(CASA-Q)との相関があるかについても評価することも目的とする。 研究機関の医学倫理審査委員会に申請し、通過後、①気管支内視鏡検査時に擦過のみで採取したヒト気管支細胞から前駆細胞を精製し、ALI培養を行い、精製した前駆細胞を逐次保存し、②線毛運動の評価、杯細胞/線毛細胞比評価、細胞内pH、細胞内カルシウム濃度、細胞内クロライド濃度、cAMP測定、③COPD治療薬の単回および長期投与における線毛運動評価をおこなっている。協力研究機関の倫理審査委員会に期間を要したが、 通過後は細胞採取が進み、全例に患者の症状評価であるCASA-Qを行い、データ蓄積中であるが、COVID-19流行により、一時中断となったが、再開している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述した目的を達成するため、研究機関に医学倫理審査委員会に申請をおこなった。最終的に半年間程度の審査通過期間を要した。その後は順調に細胞を採取し、現在15例の患者より細胞採取ならびに質問票を得ている。ただし、同意を得られなければ患者からは採取できないこと、同意を得られても悪性腫瘍の浸潤で採取できうる気管支がない患者も存在することから、プロトコール上の気管支擦過が検査中にできないこともあるため、細胞採取進捗状況は予想範囲内と考えていた。しかし、COVID-19が流行し、病院内でのSARS-COV2 PCRが行えるまでは安全に細胞を搬送・使用できなかったため一時的に採取を中断したり、気管支内視鏡検査の症例そのものが減少したため、細胞採取の進捗に遅れを生じている。 採取後のヒト気管支細胞細胞については、前駆細胞を精製し、Air Liquid Interface (ALI)培養を行い、精製した前駆細胞を保存する過程においては滞りなく、培養した気管支細胞における線毛運動の評価(線毛運動周波数Cilia Beat Frequency CBFならびに線毛運動振幅角Cilia Bend Amplitude CBAを測定)や胚細胞/線毛細胞比についての解析も順調に運んでいる。 薬剤の単回および長期投与における線毛運動評価、気道細胞分化能、エイジングマーカー発現量についての評価も、採取できた患者細胞については順調に運んでいる。培養した気管支細胞における線毛運動の評価(線毛運動周波数Cilia Beat Frequency CBFならびに線毛運動振幅角Cilia Bend Amplitude CBAを測定)や胚細胞/線毛細胞比についての解析も順調に運んでいる。 細胞採取後の進捗はおおむね順調に進展していると考えているが、細胞採取にCOVID-19流行の影響があり、進捗をやや遅れている、とした。
|
今後の研究の推進方策 |
国内で2020年に入り、COVID-19感染症が流行し、病院内でのSARS-COV2 PCRが行えるまでは安全に細胞を搬送できなかったため一時的に採取を中断したり、気管支内視鏡検査そのものの患者数がいずれの研究機関においても減少したりしたため、採取できる進捗について一時的に低下した。SARS-COV2 PCRを確認できうる病院内体制も進み、また、気管支内視鏡症例数も回復してきていることから、今後は再度採取の進捗は順調に進む予測である。 なお、得られた細胞については、前駆細胞を保存していることから、さらなる評価をすすめている。①線毛運動評価、ALI培養時の細胞内pH、細胞内カルシウム濃度、細胞内クロライド濃度、cAMP測定、気道細胞分化評価・前駆細胞のエイジングマーカー評価をCOPD群・非COPD群間についての比較について進める。②また、データ蓄積後、患者の症状評価としては、喀痰咳嗽スコアとして用いられているCASA-Qを用い、相関があるのかどうかを検証する。COPD群のみならず、非COPD群についても行う。③COPD患者からの保存細胞から分化したALI培養細胞を用い、COPD治療薬の単回および長期投与における線毛運動評価(CBF、CBA)、気道細胞分化能、エイジングマーカー発現量を評価する。→それぞれの薬剤への反応性・効果に関しては個体差がある場合、phenotypingする。 ④ ①~③で得られた結果をもとにして、粘液線毛クリアランス機能の改善のみならず、前駆細胞からの杯細胞分化への誘導因子の同定とその抑制、前駆細胞の エイジングを促進する因子の検証(各種阻害剤、siRNAによるノックダウン、CRISPR/Cas9法によるノックアウト)や、抑制する効果のある薬剤を確証していく。 さらに、それぞれ①~④について、得られた結果を取りまとめ、学会発表を行い、論文作成を行う方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、気管支内視鏡検査時に擦過のみで採取したヒト気管支細胞から前駆細胞を精製し、Air Liquid Interface培養し、 線毛運動の評価を行っているが、 COVID-19流行期に検体採取を一時中止した影響があり、既存のインキュベーター内の培養数であったことから、2020年度は購入はしていない。しかし、2021年度には既存のインキュベーター以上となる可能性が高く、予定していたインキュベータ購入分を2021年度に繰り越している。
|