慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease :COPD)のマネージメントにおいて、気道感染症予防は鍵である。気道での粘液線毛クリアランスの低下は、気道感染症リスクとなるため、その評価が、感染防御において重要である。本研究では①ヒト初代培養気道上皮細胞におけるCOPD群と非COPD群での線毛機能評価・分化誘導の差異(杯細胞/線毛細胞比)について、②前駆細胞のステムセルエイジングの差異について、③COPD群で長期薬剤負荷培養による分化やステムセルエイジングへの影響も網羅し、新たなCOPDの疾患概念の構築と革新的治療を開発し、健康寿命を延ばす治療を目標とする研究である。 気管支内視鏡検査時に気管支擦過で採取したヒト気管支細胞から前駆細胞を精製、Air Liquid Interface(ALI)培養し、 線毛運動の評価(線毛運動周波数なら びに線毛運動振幅角を測定)、電子顕微鏡による線毛形態変化・気道細胞分化評価・エイジングマーカー評価をCOPD群・非COPD群間で行うことを目的とする。 また、採取患者の喀痰咳嗽症状スコア(CASA-Q)との相関があるかについても評価することも目的とした。 研究機関の医学倫理審査委員会に申請し、通過後、①気管支内視鏡検査時に擦過のみで採取したヒト気管支細胞から前駆細胞を精製し、ALI培養を行い、精製した前駆細胞を逐次保存し、②線毛運動の評価、杯細胞/線毛細胞比評価、細胞内pH、細胞内カルシウム濃度、細胞内クロライド濃度、cAMP測定、③COPD治療薬の単回および長期投与における線毛運動評価をおこなっている。協力研究機関の倫理審査委員会に期間を要しCOVID-19流行により採取中断時期を経たが、患者の症状評価であるCASA-Qとの相関を調査した。
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