AT2の発生・分化に必要と考えられる14転写因子を抽出し、これらをレトロウイルスを用いて線維芽細胞に導入後、血清含有培地にて2次元培養を行った。導入後、AT2の特異的マーカーであるSurfactant protein-C (SPC)の発現を指標に当初の14因子の中から不可欠と考えられる4因子を絞り込んだ。さらなる培養効率の上昇のため、特異的4因子を導入した線維芽細胞をmatrigelに包埋し、3次元培養を行った。さらに培地を血清培地から、肺上皮細胞の発生・維持に必要と考えられるFGF系、BMP経路、TGF-β経路、Wntシグナル伝達経路を厳密に制御するように調整した無血清培地に変更することでリプログラミング効率、培養効率を上昇させた。SPCをGFPで標識した遺伝子改変マウスから採取した胎児線維芽細胞(Mouse Embryonic Fibroblast;MEF)に同方法で遺伝子導入・培養を行うと導入3日後からGFP陽性の細胞が確認され、その後GFP陽性の細胞からなるオルガノイドが確認された。導入7-10日後にフローサイトメトリー(FCM)で全細胞の70%前後の細胞がGFP陽性となることを確認した。線維芽細胞を含む間葉系マーカーのThy1.2陰性、上皮系マーカーのEpcam陽性、GFP陽性の誘導AT2細胞をsortし、再度同様の培地で3次元培養を行った。誘導AT2オルガノイドは蛍光免疫染色で間葉系のマーカーであるvimentin陰性、上皮系のマーカーであるE-cadherin陽性、SPC陽性のオルガノイドの存在を確認した。電子顕微鏡画像ではAT2に特徴的なラメラ体の存在を確認した。RNAseqで、線維芽細胞、AT2オルガノイド、胎児肺、成獣肺と比較すると、誘導AT2オルガノイドは胎児肺と遺伝子発現が最も近いことがわかった。
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