本研究では非小細胞肺癌の手術肺検体から得られる癌組織から肺線維芽細胞の分離培養を行い非癌部の正常肺線維芽細胞をコントロールとしたCAFの生理機能活性化機序の比較検討を行った。具体的にはCAFの遊走能に着目し生理機能解析を行った。その結果CAFはコントロールと比較し遊走能が亢進していることがわかった。さらにCAFと肺癌細胞の共培養系を構築し癌細胞-CAFの相互作用の検討を行ったところ、CAFは癌細胞と共存することで癌細胞の成長をより促進させている可能性があることがわかった。さらに我々はCAFで亢進している生理機能活性制御因子を同定するために、研究協力施設の理化学研究所においてコントロールとCAF両群のCAGEによる転写活性解析を行った。この結果をふまえ我々はCAFで亢進している制御因子integrin alpha11(ITGA11)とcollagen type 11alpha1(COL11A1)に着目し、制御因子ITGA11においてはCAFの遊走能に関与していること、制御因子COL11A1においてはCAF特異的に発現している新規マーカーとして制御因子ITGA11と相同的に発現していることがわかった。またこれらの因子を介するCAFの生理機能活性化機序を解明するため、これらの因子を肺線維芽細胞(HFL-1)に強制発現もしくはノックダウンさせCAFの遊走能の直接的制御因子であることを実証した。肺線維症の肺線維芽細胞とCAFは明らかに表現型が異なる線維芽細胞であり、この違いの理由としてCAFと癌細胞の共培養系の実験結果から癌細胞との相互作用により制御因子ITGA11と COL11A1が誘導された結果起こる現象であることを発見した。以上の結果より原著論文を作成し、査読付き英文雑誌に投稿した(Mol Oncol. 2021; 15(5): 1507-1527.)。
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