研究課題/領域番号 |
19K17684
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
藤本 雄一 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80807363)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血中循環腫瘍細胞 / 非侵襲的高感度測定 / 治療奏功予測バイオマーカー / 早期癌判定バイオマーカー / 転移再発予測 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体外がん診断薬テロメスキャンを基盤技術として、あらゆるタイプの血中循環腫瘍細胞(CTC)をハイスループットかつ高感度に検出可能な測定システムを開発し、肺がんの早期診断や個別化医療への応用を目指している。特に、悪性度が高く従来法では検出が不可能であった上皮間葉移行(EMT)を起こしたCTC(EMT-CTC)の高感度測定を可能とするシステムの実現は、早期発見・早期再発診断につながり、高額ながん治療薬の使用頻度の減少を通して医療費節減につながることが期待される。検出システム構築では、比重差遠心分離による血球細胞除去に成功し、高効率CTC濃縮法を完成させた。さらに、CTC濃縮工程につづく、手技的バイアスが少ないハイスループット測定プラットフォームを構築し、8サンプル/日のスループットを達成した。肺癌患者の3 mLの末梢血から高感度高特異度にCTCが捕捉でき、早期肺がん症例(Stage 0~)からも85%以上の高感度検出に成功している。このことから、検診などの癌早期発見においてテロメスキャンによるCTC測定システムががん超早期発見に適応可能であると考えられる。本研究ではさらにテロメスキャンによって検出したCTC上に発現する免疫チェックポイント阻害剤の奏功/耐性に関連するPD-L1の発現解析を細胞免疫染色により行い、治療奏効予測に応用可能であるか検証した。現段階では、検証した症例数が少ないが、予備検討で治療前のPD-L1-CTC陰性症例では、免疫チェックポイント阻害剤の効果が低いことが確認されている。また、悪性度が高く治療抵抗/耐性が報告されているEMT-CTCの検出のために、EMTマーカーVimentinの細胞免疫染色の条件検討を行い、多重蛍光染色によってCTCのEMT とPD-L1発現を同時に測定できる検出システムを完成させた。現在、治療効果との相関を分析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はテロメスキャンの臨床実用化を目指し、高感度CTC検出システムの構築と臨床応用へ向けて性能検証を行った。高効率なCTC濃縮法の構築とテロメスキャンを用いた高感度CTC検出技術の開発によって、超早期肺癌の診断技術を確立した。また、CTC上に発現する免疫チェックポイント阻害剤の奏功/耐性に関連するPD-L1と悪性度にかかわるEMTのマーカーであるVimentinの発現解析も多重染色の最適化によって可能となった。現在、本CTC測定システムで検出したCTC数やCTC上に発現するバイオマーカーの推移を測定し、臨床マーカーとしての有用性検証を進めている。2020年度の前向き臨床試験導入を含めた研究計画もほぼ予定していた通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、前向き臨床試験において本研究で開発した高感度ハイスループットCTC測定システムによって検出されるCTCの臨床マーカーとしての有用性検証を進める。標準治療前後にCTC測定を行い、CTCの総数およびフェノタイプ別のCTC数の変化と実際の臨床経過とCTC数の推移との相関を分析し、臨床マーカーとしての有用性を探索する。特に、CTC上に発現するPD-L1とEMTマーカーの細胞免疫多重染色による発現解析を行い、PD-L1陽性及びEMT陽性CTCが鋭敏な奏効/耐性/再発/予後予測マーカーになり得るか検証する。これらの結果から従来のRECIST画像評価より早い段階でCTC測定により早期に薬剤の奏功判定や予測が可能になれば、治療開始後早期にCTCの減少が得られない症例に対してより有効な化学療法の選択が可能になると期待される。また、再発に際して、血清腫瘍マーカーの上昇や画像診断に先立ちCTC数の上昇がみられた場合、早期再発診断の臨床検査システムとしての有用性が確立される。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の中にCTC表現型解析のための各種抗体費用を計上していたが、開発段階で染色方法の最適化を行った結果、当初計画した抗体の使用量よりも少なくなった。今後、測定検体数が多くなることが予想されるため、次年度使用額は主に免疫染色用抗体の購入に使用する予定である。
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