肺癌は、最も死亡数の多い癌であり、罹患者数は年々増加傾向にある。近年、血液からバイオマーカーを測定するリキッドバイオプシーが注目され、早期がん診断や抗がん剤の奏功予測の臨床応用への試みが数多く行われている。本研究は、がん生体外ウイルス診断薬「テロメスキャンOBP-401」を用いて、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell : CTC)をハイスループットかつ高感度に検出可能な測定システムを開発し、がん早期診断や治療奏功予測への応用を目指している。本研究の基盤技術であるテロメスキャンOBP-401は遺伝子改変アデノウイルスで、テロメラーゼ活性が亢進したがん細胞をGFP蛍光によって標識することができる。2019年度までに肺癌患者の3 mLの末梢血からのCTC検出を達成し、早期肺がん症例(Stage 0~)からも85%以上の高感度検出に成功している。また、2020年度には発光パターンによってCTCを検出するアルゴリズムを実装した画像解析プログラムを導入した。その結果、治療奏功とCTC数の推移に相関が確認できた。その後、2021年12月に計100例の患者登録を終了した(うち1例は同意撤回により除外)。解析の結果、PD-L1陽性のCTC数の推移は、投与2コース後の採血のタイミングでRECIST判定との間に有意な相関がみられた。Vimentin陽性のEMT-CTCが検出された症例数は少ないが、RECIST PD症例の一部ではEMT-CTC数が増加することが確認された。また、PD-L1/Vimentin陽性も検出された。
|