【結果】 アシドーシスに曝露された肺癌細胞はグルコースとATPの消費を抑制し、つまり腫瘍細胞を冬眠状態にし、環境ストレスに対応していた。私たちは、その治療薬候補として、cAMP (EPAC) 阻害剤によって活性化される既知のタンパク質であるESI-09が、古典的な脱共役剤よりも安全にミトコンドリア電子伝達系の脱共役をもたらし、ATP産生を減少、ATP消費の増加し、細胞内ATPを枯渇させることにより酸性環境下における栄養欠乏抵抗性を改善することが見いだした。これは、一般的な抗癌剤であるシスプラチンと反対の効果を示した。さらにESI-09は、肺癌細胞生着マウスの腫瘍増殖も抑制した。
【結論・考察】 腫瘍微小環境におけるアシドーシス、栄養欠乏時の腫瘍細胞の生存促進作用を見出し、ESI-09がアシドーシス、低栄養下での代謝のリプログラミングをすることにより、癌細胞のミトコンドリア脱共役剤であることを示した。通常よりも低いグルコース濃度でより高い細胞毒性を発揮し、ESI-09は従来の化学療法よりも安全であり、腫瘍細胞の微小環境下である、低栄養、アシドーシス下の代謝を標的としており、多くの癌細胞にも適応できる可能性がある。
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