研究実績の概要 |
IgE依存性に活性化したヒトマスト細胞から遊離される細胞外小胞に特異的に高発現しているmiR103a-3pが, ヒト2型自然リンパ球 (ILC2)のタンパク質のアルギニン残基をメチル化する酵素のPRMT5の発現を抑制していることが示唆された. そこで, miR103a-3pが, PRMT5の発現を実際に抑制しているかを検証するために, miR103a-3pが結合するPRMT5の3'UTRと結合サイトを除いたPRMT5の3'UTRをCOS1細胞にを導入し, ルシフェラーゼアッセイをおこなったところ, 結合サイトを除いたPRMT5だとmiR103a-3pが結合できなかったことから, miR103a-3pはPRMT5を標的としていることが明らかになった. さらに, AGO2 IPによって上記の結果を支持した。 次に, miR103a-3pによって, PRMT5の発現がタンパク質レベルで抑制できているかを検証した. ILC2とIgE依存性に活性化したマスト細胞が遊離した細胞外小胞と共培養すると, ILC2のPRMT5のタンパク質レベルの発現は有意に低下した. また, miR103a-3pを過剰発現させたILC2においても, PRMT5のタンパク質レベルの発現は有意に低下した. また, アトピー性皮膚炎患者の血清から細胞外小胞を単離し, miR103a-3pの発現を解析したところ, 健常人に比べ、アトピー性皮膚炎患者の血清中細胞外小胞のmiR103a-3pは有意に高値であった. したがって, 細胞小胞中のmiR103a-3pは、アレルギー疾患と関与していることが考えられた. これらの結果をまとめた論文は, Journal of Allergy and Clinical Immunologyに受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は, 当初の研究計画通りmiR103a-3pがRPMT5を標的にしているかを検証した。Targetscanを用いた解析から, miR103a-3pが結合しうるPRMT5の3'UTRの配列を特定し, ルシフェラーゼアッセイによって, miR103a-3pがPRMT5と相互作用することを明らかにすることができた. また, miR103a-3pによるPRMT5の発現抑制は, 昨年度まではmRNAレベルで確認できていなかったが, 本年度はタンパク質レベルでのmiR103a-3pによるPRMT5の発現抑制が確認できた. さらに, miR103a-3pによってPRMT5の発現が抑制されると, GATA3のアルギニン残基のメチル化も抑制されることをwestern blotで明らかにすることができた. したがって, IgE依存性に活性化したマスト細胞から遊離される細胞外小胞中のmiR103a-3pが, ILC2からのIL-5産生を増強するメカニズムを明らかにでき, さらにアトピー性皮膚炎との関連も示唆するデータも得られた. 本研究結果をまとめた論文が, Journal of allergy nd clinical immunologyに受理された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画を進めていく上で、ILC2はマスト細胞の細胞外小胞を取り込むことができるが, COS1細胞の細胞外小胞を取り込まないというデータが得られた. このことから, ILC2がEVsを取り込むには, 特異的な機序が存在している可能性が考えられるので、マスト細胞が遊離するEVsのプロテオーム解析を行い、上記の機序の中心となる分子を探索していく.
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