気管支喘息は気道を中心とした慢性アレルギー疾患の一つである。気管支喘息の発症には遺伝的要因、環境要因双方の影響が考えられているが、現在の所詳細なメカニズムは明らかでない。また、近年気管支喘息を含むアレルギー疾患と腸内環境との関連についてはいくつか報告があるものの、その制御機構は不明である。我々はヒト横断研究を用いた先行研究により、5歳時での喘息発症群では喘息非発症群に比べ、1ヶ月時糞便中Staphylococcus属のOTUcountが上昇していることを見出した(未発表データ)。各種臓器におけるStaphylococcus属の定着がアレルギー疾患の発症に寄与している報告が数多くあり、本結果は腸内Staphylococcus属が気管支喘息の発症に寄与している可能性を示唆している。
そこで本研究年度には腸内Staphylococcus属に関連する腸内代謝物におけるHDM誘発性喘息モデルマウスへの影響の検討を行った。Staphylococcus属を定着させたマウスおよびコントロールマウスにHDMを経気道投与しアレルギー性気道炎症の惹起を行い、アレルギー性気道炎症を惹起するプロトコールの中で経時的に糞便を回収する。採取された糞便はメタノール処理を行い、上清を誘導体化処理後に質量分析計を用いたガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)による短鎖脂肪酸の経時的・網羅的解析を行うことにより、腸内Staphylococcus属と相関のある腸内代謝物を同定を行った。その結果、コントロールマウスでは糞便中乳酸が上昇していること、および腸内Staphylococcus属と負の相関をきたすことを明らかにした。本結果は腸内Staphylococcus属が乳酸代謝を制御することにより、アレルギー性気道炎症を制御する可能性を示唆した。
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