本課題においてEGFR遺伝子変異を有する10症例の肺癌切除検体から、PD-L1 TPS 0%と100%の部位をそれぞれ、レーザーマイクロダイセクションを行い、計20検体について山梨県立中央病院ゲノム解析センターとの共同研究により53肺癌関連遺伝子のシーケンスを行った。その結果、全ての症例で共通して基になるEGFR遺伝子変異は検出し、DriverとなりうるOncogenic mutationの相違は一症例のみで認めた(SMAD4 p.Gly491_Asp494del)。今回での検討ではPD-L1 TPSの不均一性の背景にDriver mutationの違いは存在しないと考えられた。今回の課題の研究課程ではシングルセル解析の進歩もあり、一細胞レベルでの検討では違いが認められるのかもしれない。PD-L1 TPSの発現の違いについては更に検討を行い、腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)の影響を検討したが、PD-L1発現とTILについては有意な関連を認めた。遺伝子変異以外の因子によるTILの分布の不均一性がPD-L1の不均一性に関連していることが示唆された。本課題については、ここまでの解析結果をまとめて、現在、論文投稿中である。 また、本課題の検討の中で、癌免疫療法と腫瘍内不均一性の検討を課題として挙げていたが、腫瘍内の遺伝性変異による不均一性は認められなかったため、癌免疫療法と遺伝子変異との相関を検討する研究を2020年より開始しており、2023年度には結果をまとめて報告できる見通しである。
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