細胞外小胞の一種であるエクソソームは蛋白,核酸等多種多様な分子を内包しており,細胞間コミュニケーションの担い手として働くことが知られている.先行研究の成果として,腎臓病では尿中に腎臓の各構成細胞由来のエクソソームが検出可能であり,内包物の検討が進められている.本研究では,腎臓病動物モデル及びヒト腎臓病での尿エクソソームの質的・量的比較検討を行い,その障害細胞特異性を明らかにすることを目的とした.その特異性に応じて,診断・治療マーカーとなりうるエクソソーム内包物の探索をおこなう.続いて,エクソソーム内包物による培養細胞刺激実験によって細胞機能への影響を検討する.
腎臓病動物モデルにおける尿エクソソームの質的・量的比較検討に着手した. ①ラット尿エクソソームの簡便な抽出・定量方法は確立していなかったため,いくつかの抽出・定量方法を施行,結果を比較し,適切な方法を検討した. ②腎臓病モデル動物間での比較検討:糸球体・ポドサイト障害モデルとしてPAN腎症ラット,尿細管障害モデルとして虚血再灌流ラットを採用し,モデル間,コントロールとの尿エクソソームの定量比較を行い,量的差異の有無を検討した.結果,モデルの障害時相に応じてのエクソソームの量的変化を検出した.続いてエクソソームRNAの抽出,定量PCRで障害部位に応じたマーカー候補(Tcf21,ネフリン,DKK3,アクアポリン1・2,等)の発現の差異を検討した.
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