研究課題/領域番号 |
19K17709
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
島田 果林 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60814770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CKD / 腎性貧血 / Ca感知受容体 / calcimimetics |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病の合併症である心血管病や、二次性副甲状腺機能亢進症では、血管平滑筋や、副甲状腺のCa感知受容体の低下が病態形成に関与していると報告されているが、腎性貧血などその他の合併症や、慢性腎臓病そのものの進展にも、Ca感知受容体の発現低下が関与している可能性を考えた。仮説が正しければ、Calcimimetics(Ca感知受容体作動薬)は、現在のところ、二次性副甲状腺機能亢進症治療薬として使用されているが、CKDのその他の合併症にも効能を持つと考えられる。まず、我々は、腎性貧血の病態にCa感知受容体が関与しているかを検証した。腎性貧血を呈する慢性腎不全モデルとして、アデニン食を6週間負荷したマウスを用い、3週間にわたり、calcimimeticsを投与し、骨髄細胞中のTer 119陽性細胞(赤血球系)が有意に増加することを示した。さらに、in vitroの実験で、マウス骨髄細胞にcalcimimeticsを添加することで、BFU-E、CFU-Eの数が増加し、α-globin、β-globinのmRNAの発現が増強していることを確認した。Calcimimeticsが腎性貧血を改善することを示しているが、CaSRの発現低下が病態形成にどの程度寄与しているかは検証できておらず、今後の課題である。また、心肥大や、腎症そのものの進展にもCaSRの発現低下が関与しているという仮説を考えており、腎臓においては、リン負荷による腎障害モデルで確認済みである。今後は、心肥大においても複数のモデルにおいて、CaSRの発現低下が起こっているか、さらに心肥大や、腎症の進展にcalcimimeticsが治療選択肢となり得るかを確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず腎性貧血モデルを作成した。片腎摘出+アデニン負荷群、アデニン単独負荷群の2群にわけ、負荷期間を検証した。アデニン単独負荷の方が、死亡個体が少なく、より均一な腎性貧血モデルとなることを確認し、負荷期間は6週間で十分に貧血を呈することを確認した。その後、calcimimeticsを投与し、骨髄中のTer 119の割合が有意に増加することを確認した。In vitroの実験においては、マウス骨髄細胞を用いて、エリスロポエチン添加培地にcalcimimeticsを加えるとBFU-E、CFU-Eのコロニー数が増加することを確認した。さらに、骨髄細胞中の遺伝子発現をRT-PCRで評価し、α、β-globinのmRNAの発現が増強することを確認した。In vitroにおいては、calcimimeticsは骨髄細胞に直接作用し、赤血球系へ分化誘導を増強させることが分かった。その他、リン負荷による慢性腎不全モデルにおいて、腎臓において、CaSRの発現低下を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoで骨髄中のTer 119の割合が増加するが、これがcalcimimeticsの直接作用かは示せていない。マウスで、PTHの持続投与下においても、検証することで確認する予定である。 その他のCKDの合併症としては、心肥大なども広く知られるところであり、これにCaSRの発現低下が関与しているかどうかも興味深い。慢性腎不全モデルで、心臓のCaSR発現が低下しているかを検証する。また、calcimimeticsにより、心肥大が改善するか、in vitro、in vivoいずれにおいても確認予定である。また、腎障害の進展そのものにも、CaSRの発現低下が関与している可能性を考えており、リン負荷による腎障害モデルでは、CaSRの発現低下が起こることを確認しており、calcimimeticsの投与により、これらが改善するかを検証する予定である。
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