まず、すでに保有するX染色体連鎖型アルポート症候群女性患者の血液から抽出したゲノムDNAを用いてX染色体不活化解析を施行した。先行研究から日本人女性 患者の末期腎不全到達年齢中央値である65歳よりも早い段階で末期腎不全に至った症例を13例抽出し解析を行った結果、明らかなX染色体不活化の偏りを認めた 症例は1例のみであった。結果として、少なくとも血液のX染色体不活化が疾患重症度と関与する可能性は極めて低いと判断された。 次に、腎生検により得られた切片から抽出したDNAおよびRNAにおける不活化解析を行う準備として、自施設にて過去に腎生検を行い保存されている検体(パラフィン切片)を用いて薄切切片からのDNAおよびRNA抽出量の確認を施行した。レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LMD)による糸球体の単離を行わない 状態で10um厚の切片全体(1×15mm程度)からのRNAおよびDNAの抽出量はそれぞれ200ng/切片および100ng/切片と解析に耐えうる量であることが判明した。一方 で、パラフィン切片中の糸球体の面積比率からはLMDを行うと解析に十分な量のDNAおよびRNAが回収できない可能性が考えられた。そこでパラフィン切片ではな く凍結切片を用いてRNAの抽出を行ったところ、単位面積あたり約6倍のRNAが回収できることを確認した。 今後はまず切片全体から抽出したDNAおよびRNAで不活化解析を行い、解析系ができることを確認した上で、LMDを用いて糸球体のみを単離し不活化解析を行う予定としている。また、平行して免疫染色による不活化解析も施行予定である。さらに、X染色体連鎖型Alport症候群の原因遺伝子であるCOL4A5を含めたRNA解析用疾患パネルを作成し、血液や腎臓など十分な量のRNAにおいて解析が可能であることを確認した。
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