本研究では、ヘンレループの太い上行脚から生理的に産生され、尿中へ分泌されるタンパクであるウロモジュリンをテーマとして、尿細管腔内へ分泌されたウロモジュリンによる体液バランス調節と、糸球体濾過調節メカニズムとの関連を明らかにすることを目的とする。体液バランス調節機構の中心として、水・ナトリウムの再吸収を司る尿細管上皮細胞に発現するトランスポーターに着目した。これまでの検討で、マクラデンサ細胞の単離培養を試みたが困難であったため、尿中へ分泌されたウロモジュリンが尿細管上皮細胞の働きに対する生理的な作用についての検討を行うことを優先させることとし、ウロモジュリンの到達部位である集合管上皮細胞におけるウロモジュリンの働きについて検討した。ウロモジュリンの集合管上皮細胞アクアポリンへの働きについて、集合管細胞株を用いたin vitroの系において解析した。バゾプレッシン刺激による集合管細胞でのcAMP誘導とアクアポリン発現亢進を確認したのち、ウロモジュリンの培地添加によるアクアポリン活性の変化について検討した結果、ウロモジュリンはアクアポリンの細胞膜上発現とリン酸化を促進させることが明らかとなった。 次に、in vivoでのウロモジュリンと集合管上皮細胞機能との関連を解析した。当初の計画では、海外の協力機関から遺伝子改変マウスにつき協力が得られる見込みであったが、協力機関での動物の準備が進まず供与を断念せざるを得なかった。そこで、CRISPR/Cas9システムを用いてウロモジュリンKOマウスを作成した。野生型マウスにおいては飲水制限によりアクアポリン活性化が促進された一方、ウロモジュリンKOマウスでは、アクアポリン活性化の減弱がみられた。加えて、野生型マウスにおいて腎組織の固定法を工夫することにより、組織学的に集合管上皮細胞膜上へのウロモジュリン接着を明らかにすることができた。
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